目次文献略語

民事訴訟法講義

上 訴 1


関西大学法学部教授
栗田 隆

1 上訴概論


1.1 上訴制度

意義
第一審で敗訴した当事者は、しばしばこれに不満をもち、判決は誤りであると考える。不満の解消のためには、より経験の深い裁判官にもう一度審理裁判させるのがよい。そこで、経験の富んだ裁判官を上級裁判所に集めるという裁判所の階層構造と一体となった上訴制度が設けられた。

目的
上訴制度は、(α) 下級裁判所の誤った裁判から当事者を救済することを一つの目的とする。また、(β)国民の多数の裁判需要に応えるために全国に多数の裁判所を配置しなければならないことを前提にすると、多数の裁判所における法令の解釈・適用を統一することが必要となる。法令の解釈・適用の統一を最高裁判所により図ることが、上訴制度のもう一つの目的である。

三審制
上訴制度は、裁判所の階層構造を通じて判決の正当性を高めることを目的とするが、しかし、当事者の負担、紛争の迅速な解決の必要を考慮すると、有限でなければならない。現行法は、2つの事実審(第一審、控訴審)と事実審理を行わない1つの法律審(上告審)の利用を当事者に認めた。
上告審 法律審(事実審理を行わない)
控訴審 事実審(事実審理を行う)
第一審


上訴の対象
上訴の対象は、判決に限られない。決定や命令を含めて、ある裁判所が下した裁判(原裁判)に対して不満のある当事者が上級裁判所に救済を求める申立てが上訴である(この申立ては、原裁判の取消しとそれに代わる裁判の要求という形でなされる)。上訴には、原裁判(上訴により不服を申し立てられている裁判)の種類により、異なる名称が付されている。
上訴の要件
上訴が適法であるためには、一般に、次の要件を充足することが必要である(詳しくは、控訴について述べる)。
  1. 原裁判が独立の上訴に親しむものであること  例えば、中間判決については、独立の上訴は許されておらず(281条の反面解釈)、終局判決に対して上訴を提起して、その中で不服を主張する(283条)。
  2. 適式で有効な上訴行為の存在
  3. 上訴期間の遵守  上訴に期間制限がある場合には、その期間内にしなければならない。期間徒過後は、追完事由の存在が必要である。
  4. 上訴の利益  上訴人は、上訴により救済を求めるだけの利益を有していなければならない。
  5. 上訴権の放棄、不上訴の合意のないこと  上訴についても処分権主義が妥当し、当事者は、上訴権を放棄したり、上訴しないことを合意することができる。そのような放棄・合意がある場合には、上訴は不適法となる。

不服申立て制度の中での上訴の位置付け
裁判の取消しを求め(これと併せて、必要に応じて新たな裁判を求め)る申立てを、一般に、不服申立てという。上訴は、上級裁判所への不服申立てである。他方、問題となっている裁判をした裁判所への不服申立ては、異議と呼ばれる。例えば、手形訴訟における異議がそうである(357条。手形訴訟では審理方法が制限されているので、上訴の前に、判決をした裁判所が通常の訴訟手続によりもう一度審理・判決する)。その他に、378条や150条の異議などがある。

裁判に対する不服申立て(救済申立て)をもう少し広げて見ると、通常の不服申立てと非常の不服申立てとに分類することができる(「非常」は、単に「通常でない」を意味する)。これは、確定が問題となる裁判について、当該不服申立てが裁判の確定を遮断するか否かによる分類である。終局判決について見てみよう。
上訴と上訴審の訴訟手続
ここで、条文を読む上で留意すべき点を指摘しておこう。民事訴訟法は、「控訴」と「控訴審の訴訟手続」とを区別している。
控訴に関する規定は、控訴の提起・取下げ・附帯控訴に関する281条から293条までの規定である。294条の仮執行宣言に関する規定はこれに含まれない(裁判に関する規定であるにもかかわらず、この位置にあるのは、手続の進行の流れに沿って規定を配列しているからである。すなわち、控訴審の訴訟手続の最初の段階で当事者の不服申立ての範囲が明らかにされ、その段階でこの規定による仮執行宣言がなされることが予定されているからである)。第2編第1章の規定も297条により控訴審に準用されているが、これは、これらの規定を控訴の提起に準用するという趣旨ではなく、控訴審でも新たな訴えを提起したり、第一審で提起された訴えを控訴審で変更することができるという趣旨での準用である。なお、第1編の規定は、総則規定であるので、控訴審においても適用がある(準用ではない)。

上告と上告審の訴訟手続も同様に区別されるが、これらは控訴と控訴審の訴訟手続と近接した性質があるので、313条において第3編第1章(控訴)の規定が準用されるものとされている。

上告受理の申立てに基づき上告受理の決定がなされると、上告があったものとみなされ(318条4項)、その後の訴訟手続は上告審の訴訟手続となる(従って、その後の訴訟手続について上告審の訴訟手続に関する規定を準用する旨の規定などはない)。上告受理の申立ては上告と親近関係にあるので、318条1項から4項に独自の規定が置かれ、同条5項で上告に関する規定のいくつかが準用されている。

準用の積重ね
民事訴訟法で準用が最もよく現れるのは、上訴の領域である。控訴や上告のあたりはまだわかりやすいが、特別抗告などになると、複雑である。
  1. 特別抗告に関する336条3項で、特別上告とその上告審の訴訟手続に関する規定が準用され
  2. 特別上告に関する327条2項で、通常の上告およびその上告審の訴訟手続に関する規定が準用され、
  3. 通常の上告に関する313条で、控訴と控訴審の訴訟手続に関する規定が準用され、
  4. 控訴に関する297条で、第一審の訴訟手続に関する規定が準用される。

ここまで準用が積み重なると、どの規定がどのように準用されるのかを読み解くことは、神経の疲れる仕事となる。民事訴訟法の条文に相当に慣れてから挑戦する方がよい。

2 控 訴


文献 [10]

2.1 控訴の対象となる裁判(281条

控訴は、第一審の終局判決に対する第2の事実審への不服申立てである。対象となるのは、簡易裁判所もしくは地方裁判所が第一審としてする終局判決(281条1項)、又は家庭裁判所が第一審としてする終局判決である(人訴29条)。高等裁判所が第一審としてする終局判決に対する上訴は、最高裁判所への上告となる(裁判所法7条1号)。飛越上告の合意、すなわち、上告の権利を留保して控訴しない旨の合意を当事者がしている場合には、第一審判決に対して控訴はできず、上告のみが可能となる(281条1項ただし書)。

控訴の対象となるのは、終局判決に限られる。判決以外の裁判(決定、命令)に対する不服申立ては、抗告となる。中間判決に対して独立の控訴を認める国もあるが、日本の現行法はこれを認めていない。中間判決の当否は、終局判決に対して控訴が提起された場合に、その終局判決前の裁判として控訴裁判所の判断を受ける(283条)。

訴訟費用の裁判(67条1項)は、ときに本案(請求)についての裁判以上に重要な場合もあるが、それでも付随的なものであり、有限な裁判資源の有効利用のために、訴訟費用の負担の裁判に対する独立の控訴は認められない(282条)。本案の裁判に対する控訴が不適法である場合、あるいは控訴に理由がない場合には、費用の裁判に対する不服申立ても許されない。控訴審が費用の裁判を変更するのは、本案の裁判を変更する場合に限られる(なお、67条2項も参照)。

2.2 控訴権

当事者が原判決の変更を求めるために控訴審手続の開始を求めることができることを、当事者の権利と見て、控訴権という。控訴権は、原判決により不利益を受ける当事者に生ずる。控訴権の存在は、控訴の適法要件であり、これが欠ける場合には、控訴は却下される。
控訴を提起できる者
控訴を提起できる者は、当事者またはその補助参加人である。補助参加、独立参加あるいは共同訴訟参加しようとする者も、参加とともに控訴を提起することができる。

控訴の利益(不服申立ての利益)
自己に不利な第一審判決が変更されることについて当事者が有する利益を控訴の利益という。控訴の利益を有しない者は、控訴権を有しない。控訴の利益の有無の判断基準については、見解が分かれている。

形式的不服説 当事者が第一審で求めた判決 > 第一審判決  (例外あり)
実質的不服説 当事者が控訴審で求める判決 > 第一審判決
新実質的不服説 上訴以外の方法では得ることのできない利益(あるいは回避することのできない不利益)が存在すること
自己責任説 新実質的不服説+自己責任による上訴の抑制

 (形式的不服説  当事者が第一審で求めた判決内容と第一審判決の内容とを比較して、後者が前者に満たない場合に控訴の利益を肯定する見解である。第一審で求めた通りの判決を与えられた当事者(全面勝訴の当事者)がそれより有利な判決を求めて上訴を提起することは、認められない。それは、敗訴にもかかわらず第一審で紛争を解決しようとする相手方の期待を害することになるからである。また、勝訴当事者は、必要であれば別訴でそれを求めることができ、別訴に代えて上訴を許すと相手方の審級の利益が害されやすい。形式的不服説が、現在の多数説である。

 ただし、第一審判決が確定するとその効力により別訴で請求できなくなる利益が存在する場合に、当該利益を得るために上訴することは、例外的に認められている。例:(a1)黙示の一部請求を認容する判決により残部請求が遮断されることを前提にして、黙示の一部請求の全部認容判決を得た原告が請求拡張のために上訴を提起する場合; (a2)離婚請求棄却判決を得た被告が自らの離婚の反訴を提起する場合(人訴法25条により別訴が禁止されている); (a3)身分関係の重要性を考慮すると、離婚請求を認容された原告が請求放棄のためにする控訴も許されてよい(266条参照。なお、人訴法37条参照)。

 (実質的不服説  当事者が控訴審で求める判決内容と第一審判決の内容とを比較して、後者が前者を上回る場合に控訴の利益を肯定する見解である。控訴審で新たに要求する部分について相手方の審級の利益が害されやすいといった問題点があり、現在では支持者はほとんどいない。

 (新実質的不服説  上訴以外の方法では得ることのできない利益が存在する場合(上訴以外の方法では回避することのできない不利益が存在する場合)に上訴の利益を認める見解である。例:(c1)第一審で敗訴の当事者は、第一審判決が確定するとその既判力により不利益を受け、それから逃れるためには上訴によらなければならないから、上訴の利益がある; (c2)黙示の一部請求を全部認容された原告は、第一審判決が確定すると残部請求を遮断されるから、追加請求のための上訴ができる。他方、明示の一部請求を全部認容された原告は、残部について、別訴で追加請求することができるから(判例の立場)、請求拡張の為に控訴を提起する利益を有しない。(c3)その他、形式的不服説が例外的に上訴の利益を肯定するa2,a3の場合についても、上記の原則に従い、上訴の利益を肯定する。

 (D)自己責任説(新実質的不服+自己責任説あるいは折衷説)  上訴の利益の判断にあたっては、新実質的不服説の意味での不服概念を基礎にすべきであるが、当事者の原審における行動についての自己責任も考慮すべきであるとして、裁判所が当事者の申立てに拘束される場合には、当事者は自ら求めた裁判による不利益を甘受すべきであり、原則として、その不利益は上訴の適法性を根拠づけないとする説([栗田*1985a]76頁以下)。自己責任の視点から、黙示の一部請求の全部認容判決を得た原告の上訴の利益が肯定されるのは、第一審の口頭弁論終結後に初めて残部の存在に気づいた場合に限定されるべきであるとする([栗田*1985a]67頁以下)。他方、身分関係訴訟については、身分関係の重要性は自己責任の原則を上回るとして、例えば、離婚請求を認容された原告が請求放棄のためにする控訴も許されるとする。

比較検討
新実質的不服説は、形式的不服説が例外的に控訴の利益を認めた場合(前記(a1) (a2) (a3)の場合)も、原則の適用事例に取り込むことができることを特色とし、両説の結論上の差異は少ない。しかし、形式的不服説あるいは自己責任説は、処分権主義を前提にして、自ら求めた判決に不服を申し立てることは原則として許されないという形で、当事者の自己責任を重視するものである。したがって、これらの説にあっては、求めた判決が与えられた場合に上訴の利益を肯定するためには、それを正当化する理由付けが常に必要とされる(自己責任説は、その点を意識的に強調する)。他方、新実質的不服説は、その理由付けを要求しない。この点でなお違いがあり、控訴の利益が肯定される範囲は、形式的不服説あるいは自己責任説の方が、新実質的不服説よりも狭いというべきである。

控訴の利益の生ずる事項
控訴の利益は、判決の効力の生ずる事項についてのみ生ずる。原則として主文中の判断に限られる。理由中の判断は、当事者が判決を求めた事項についての判断ではなく、また、これに既判力は生じないのが原則であるので、この部分についての不満は控訴の利益を基礎づけない。ただし、相殺の抗弁についての判断は既判力を有するので(114条2項)、控訴の利益を基礎づける。例えば、原告からの金銭支払請求に対し、第一次的に債権の発生を争い、第二次的に債権の発生が肯定されるのであれば反対債権で相殺すると被告が主張した場合に、債権の発生と反対債権による相殺を認めて請求を棄却する第一審判決に対して、被告は相殺によらない請求棄却判決を求めて控訴する利益を有する[5]。

請求棄却判決に対する上訴の利益についてのメモ
請求棄却判決に対する上訴の利益は、どの判断に既判力が生ずるかの問題と絡んで、難しく考えると難しい問題となる。例えば、XがYに対して提起したα債権の支払請求訴訟において、α債権の不発生を理由に請求が棄却された場合に、敗訴の原告は上訴の利益があり、勝訴の被告に上訴の利益がないことに問題はない。かし、次のような場合については、検討が必要である。

)α債権は発生したが、時効により消滅したとの理由で棄却された場合は、どうであろうか。この場合に、原告の上訴の利益が肯定されることに問題はない。被告についてはどうであろうか。原告はα債権を時効完成前に相殺適状にあった被告の債権(β債権)との相殺に供することができる。この点を考慮して、被告は、理由の差し替えを求めて、上訴することができるかが問題となる。もし後の訴訟(YのXに対するβ債権支払請求訴訟)において、前訴判決の「α債権が発生し時効により消滅した」との判断が拘束力を有するのであれば、前訴においてYに上訴の利益を認めておかなければならない。もしその判断の拘束力を否定するのであれば、拘束力が生ずるのは、「口頭弁論終結時において、XはYに対してα債権の支払を請求できない」との判断にとどまろう。そうなると、α債権は発生しなかったことを理由とする請求棄却判決も、発生したが時効により消滅したことを理由とする判決も、既判力の生ずる判断は同じとなる。このように考えても、この範囲では特に不都合は生じないであろう。

)では、「訴求債権は発生して現に存在しているが、履行期が到来していない」との理由で請求を棄却する判決はどう考えるべきであろうか。この判決も、訴求債権の不発生を理由に請求を棄却する判決も、既判力の生ずる判断は同じであると考えると、訴求債権の不発生を理由に請求を棄却した判決が確定した後でも、「訴求債権は発生しており、口頭弁論終結後に弁済期が到来した」と主張して再度訴えを提起することが可能になる(前訴判決の既判力ある判断によっては妨げられない)。これは、請求棄却判決の紛争解決機能を低下させる。となると、弁済期未到来を理由とする請求棄却判決と、債権の不発生あるいは時効による消滅を理由とする請求棄却判決とを区別する必要が生ずる(審理の段階でも、弁済期未到来の抗弁は最後に判断すべきことになる)。

棄却理由の選択の自由度を高め、上訴提起の必要を低減させるために、理由中の判断に既判力を否定することの要請と、紛争解決の実効性を確保するために棄却理由にも一定の範囲で既判力を肯定することの必要性との調整をどのようにつけるかの問題と言ってよいであろう。前記の2つの場合のうち、(b)については、後者の必要性が高い。(a)の場合については、前者の要請が強いと考えてよいであろうか。もしそうだとすると、次に、両者の区別をどのように図るかが問題となる。

控訴権の放棄(284条
第一審判決の言渡後であれば、各当事者は自己の控訴権を放棄できる。控訴権放棄は、裁判所に対してその旨を申述することによりなす(規則173条1項)[16]。控訴提起後に控訴権を放棄する場合には、控訴取下げとともにする(規則173条2項)。第一審判決言渡前に、将来生ずる控訴権を予め放棄することは許されない。その判決により自己の受ける不利益を正確に判断できず、危険だからである[7]。

不控訴の合意
民事訴訟法は、判決言渡後の控訴権放棄および飛越上告の合意を明示的に認めているにすぎないが、不控訴の合意も許される。判決言渡前の合意が許されるかについては、肯定説と否定説とが対立している。
  1. 肯定説(判決言渡前でも許されるとする説)  この説は、当事者の処分権を尊重して、次のように言う。不控訴の合意により、訴訟は第一審で終了することになるが、それは仲裁の場合と同じである。仲裁の合意が許される範囲では、判決言渡し前においても不控訴の合意も許されるとしてよい。
  2. 否定説(判決言渡し後にのみ許されるとする説)  現行法に受け継がれている昭和23年の民事訴訟法改正の趣旨を尊重して、判決言渡し前の不控訴の合意は許されないとする。改正の趣旨は、当事者の一方が社会的または経済的優位を利用して不控訴の合意を弱者である相手に強いることを防止することである([松本=上野*民訴法v2]390頁、[書記官研修所*2002a]279頁)。

肯定説が妥当であろう。昭和23年改正の趣旨はもちろん了解できるが、しかし、その趣旨を貫けば、仲裁契約も否定されるべきことになろう。有効な仲裁契約が存在する場合には訴えは不適法となることを肯定しつつ、判決言渡し前あるいは訴訟開始前の不控訴の合意を否定するのでは、首尾一貫しない。そして、判決言渡前の不控訴の合意を禁ずる明文の規定があるわけではないから、首尾一貫しない弱者保護の方策よりも処分権主義の原理が優越することになる。ただし、仲裁法が仲裁の対象を次のように限定しており、この範囲で不控訴の合意も制限をされる。社会的・経済的に優越した地位にある者による不控訴の合意の濫用の問題は、これによりかなり減少するであろう。
判決言渡し前においては、当事者の平等を害しない不控訴の合意のみが許され([条解*1986a]1160頁)、一方のみが控訴しない旨の合意は許されない。不控訴の合意がなされると、控訴できないので、上告の余地もない[18]。

飛越上告の合意
飛越上告の合意は、上告の権利を留保した不控訴の合意であり、不控訴の合意の変種である。なお、飛越の語は「とびこし」とも読むが([高橋*重点講義・下] 466頁)、この講義では「ひえつ」と読む。

飛越上告は、単純な不控訴の合意よりも当事者の権利を制約することが少ないのであるから、不控訴の合意が許される範囲では、飛越上告の合意も許されてよいように思えるが、昭和23年改正以来、明文の規定で、これは第一審判決言渡し後に(のみ)許されている(281条)。その理由は、次のように説明されている:飛越上告制度は事実認定に不満がない場合に法律問題について迅速に決着を得るための制度であるから、第一審判決の事実認定を見てから飛越上告の合意をさせるのが適切である([高橋*重点講義・下] 466頁)[17]。

飛越上告により原判決が破棄され、事件が差し戻されるべき場合には、事件は第一審に差し戻される。先の飛越上告の合意の効力は、差戻後の第一審判決については及ばない。当事者は、差戻後の第一審判決を見てから、あらためて飛越上告の合意をなすか否かを判断する。

2.3 控訴の提起(285条以下)

提起の時期・控訴期間285条
控訴の提起は、判決言渡後であれば、判決送達前でもできる。判決言渡前の控訴提起は許されない(裁判所に無用な負担をかけないよう、判決内容を知った上で控訴するか否かを決すべきである)。控訴期間は、各当事者が判決の送達を受けた日から2週間である(285条)。各当事者は、判決言渡し後、この期間の満了するまでに控訴を提起しなければならない。

控訴状の提出先と必要的記載事項
控訴の提起は、控訴状を第一審裁判所に提出してする(286条)。控訴状を控訴裁判所に提出することは許されない。控訴状の提出先を第一審裁判所に限定することにより、第一審判決が確定したか否かの判断が容易となる。

控訴状には、286条2項所定の事項を記載する。控訴審における審理裁判の範囲を特定する具体的な不服申立て(296条304条)、およびその理由(攻撃防御方法)は必要的記載事項ではない。しかし、可能であれば、それも記載することが望まれる。攻撃防御方法が記載されている控訴状は、準備書面を兼ねる(規175条)。控訴状に原判決の取消し又は変更を求める具体的事由がないときは、控訴提起後50日以内にその事由を記載した書面(控訴理由書)を控訴裁判所に提出しなければならない(規182条)。具体的な不服申立ては、控訴審の審判範囲を特定する重要な申立てであるので、控訴状または控訴理由書に必ず記載されるべきである。不服申立範囲の変更も同様に、書面に記載されるべきである(書面の標題は「控訴理由変更書」)。

控訴提起の手数料
控訴人は、控訴の訴額(控訴により得ようとする利益)を基に算定される手数料を納付しなければならない。例えば、1000万円の金銭支払い請求について、600万円部分の認容と400万円部分の棄却判決に対して原告が控訴を提起する場合には、控訴により得ようとする利益は400万円であり、400万円の支払請求の訴えに対する手数料額の1.5倍の額が控訴提起の手数料となる(民訴費用法別表第1第2項。[金井=小野=寺尾*2002a]20頁)。

控訴提起の有効性
控訴の提起も、訴訟行為の有効要件についての一般原則に従う。控訴人、その補助参加人又はこれらの者の代理人により有効に提起されなければならない。

形式的意味での控訴と実質的意味での控訴
控訴提起は、控訴状の必要的記載事項の点から見る限り、原判決のどの部分について取消しを求めるかを明示する必要のない形式的な申立てであり、これにより判決確定遮断の効果と移審の効果が生ずる。この意味での控訴を「形式的意味での控訴」と呼ぶことにする。控訴審における審理・裁判の対象は、口頭弁論期日においてなされる原判決変更の申立てにより特定される(296条)。この取消申立てを含んだ意味で控訴の語が用いられる場合もある(例えば、302条の控訴棄却)。この意味での控訴を「実質的意味での控訴」と呼ぶことにする。

第一審裁判所による審査(287条
第一審裁判所は、控訴要件について審査し、補正不能な不備があることが明らかな場合には、決定により控訴を却下する。例えば、控訴期間を徒過していること、控訴の利益がないことがこれに該当する。なお、控訴状の審査・補正命令の権限は、第一審裁判所にはない(上告の場合に関する314条2項に対応する規定がないことに注意。[法務省*1998a]328頁)。控訴却下の決定がなされる場合を除き、第一審の裁判所書記官は、控訴状を事件記録と共に控訴審の裁判所書記官に送付する(規174条)。記録には、第一審判決の原本ではなく正本を添付する(上告の場合に関する最高裁判所 昭和35年5月24日 第3小法廷 判決(昭和32年(オ)第487号)参照)。

控訴審の裁判長による控訴状の審査(288条
次の場合には、控訴裁判所の裁判長が相当の期間を定めて補正を命じ、期間内に補正がなければ控訴状を却下する。この却下決定に対しては即時抗告をなすことができる(288条・137条)。
控訴状の送達(289条
控訴が提起され、控訴審手続が開始されることを相手方(被控訴人)に知らせるために、控訴状は被控訴人に送達しなければならない(1項)。この送達により、被控訴人と裁判所の訴訟法律関係、及び被控訴人と控訴人の訴訟法律関係が成立する。

控訴状の送達をすることができない場合に、それが控訴状の送達を受けるべき者(被控訴人本人あるいは法定代理人)の所在の不明等によるものであり、控訴状の補正あるいは控訴人からの情報提供によ送達が可能になるときは、補正命令を発する。控訴人が補正に応じないとき、あるいは補正の余地がないときは、控訴状を却下する(259条2項・137条)。

ただし、(α)日本の民事裁判権に服さない者を被告とする訴えについて、訴状の送達の可否及び訴状の却下の可否に関する第一審裁判所と抗告審との見解の相違のために、第一審裁判所が被告に訴状を送達することなく訴えを却下する判決をし、その判決に対して控訴が提起された場合には、控訴審は控訴状を被控訴人に送達することなく控訴棄却の判決をすることができる。(β)濫用的な訴え、あるいは当事者の訴訟活動によって適法にする余地がまったくない明らかに不適法な訴えが提起された場合に、(β1)その訴えが被告への訴状の送達を経ることなく却下され、その却下判決に対して控訴が提起されたときも同様である。(β2)第一審は訴状を送達し、訴え却下判決を被告に送達したときでも、控訴審が被控訴人に控訴状を送達することなく控訴を棄却することも認めてよい。

2.4 控訴提起の効果

控訴が提起されると、控訴審における審理・裁判の論理的前提として、次の効果が生ずる。
控訴不可分の原則
控訴の提起に当たっては、判決のどの部分が取り消されるべきかを特定する必要はなく、また、相手方も附帯控訴により判決の取消しを申し立てる余地があるので、控訴提起により判決全体の確定が遮断され、判決の下された事件全体が控訴審に移審すると構成される。これを控訴不可分の原則という。同一当事者間では、次のようになる。
通常共同訴訟の場合には、当事者が異なれば、控訴不可分の原則は働かない。他方、必要的共同訴訟や独立当事者参加訴訟の場合には、判決の合一的確定を保障するために、当事者の相違を越えて控訴不可分の原則が及ぶ。

2.5 控訴の適法要件と却下および取下げ(290条以下)

控訴の適法要件
第一審判決が不当であるから取り消されるべきであるとの主張(不服の主張)の当否について判断してもらうために必要な要件を、控訴の適法要件という。適法要件を満たしていない場合には、原判決の当否に立ち入ることなく、控訴は不適法として却下される。控訴の適法要件は、下記の通りである。
  1. 不服申立ての対象たる裁判が控訴に親しむものであること(前述2.1参照)
  2. 控訴人が控訴権を有すること(前述2.2参照)
  3. 控訴が適式にかつ有効になされていること(前述2.3の「控訴状の提出先と必要的記載事項」「控訴提起の手数料」「控訴提起の有効性」参照)

控訴の却下(290条
控訴が不適法な場合には、控訴裁判所は、判決により控訴を却下する。控訴が不適法で、その補正の余地がない場合には、口頭弁論を開くことなく却下することができる。これは、控訴の適法性について控訴人に弁論の機会を与える必要がないほどに不適法であることが明らかで、かつ補正の余地がない場合を指すと解すべきである。補正の余地がある場合には、補正の機会を与える(必要であれば口頭弁論を開いて補正の機会を与える)。補正がなされなければ、控訴を却下する。

決定による却下(291条
期日の呼出し費用は、控訴人が予納する。その予納がない場合には、問題の手続的性質を考慮して、決定で控訴を却下する。この決定をなすには、相手方の同意は必要ない(141条と対照)。控訴却下により原判決が確定し、相手方は、これにより紛争を解決させることができるからである(控訴の取下げに相手方の同意が必要ないことに対応する)。この決定に対しては、即時抗告ができる。

控訴の取下げ(292条
控訴提起の意思表示を撤回する行為を控訴の取下げという。控訴の取下げは、第一審判決の確定をもたらし、これにより紛争が解決される。したがって、訴えの取下げの場合と異なり、控訴の取下げには相手方の同意は必要ない(292条2項における261条2項の不準用)。また、取下書の被控訴人への送達はなされず、裁判所書記官が通知するにとどまる(261条4項の不準用、規則177条2項)。

控訴の取下げについては、次の規定が準用される(292条2項)。

2.6 附帯控訴

初めの一歩
XがYに対して1000万円の損害賠償請求の訴えを提起し、600万円が認容され、その余が棄却された。Xは、これに不満はあったが訴訟を終了させようと思い、控訴しなかった。ところが、Yが控訴して、請求棄却判決を求めた。Xは、控訴審において、第一審で認められなかった400万円の支払を命ずる判決を求めることができるか。

初めの一歩
XがYに対し建物明渡請求の訴えを提起し、請求が認容された。Yが控訴したので、XがYの行為により建物が損傷を受けたことを理由に損害賠償請求を追加した(297条143条)。この請求の追加は附帯控訴の方式でなされるべきか。Yが控訴を取り下げた場合に、新請求についての訴訟係属はどうなるか。

附帯控訴の制度の趣旨
原判決が両当事者に不満を与えるものである場合に、一方の当事者は第一審判決により紛争を終了させようとして控訴を提起しなかったのに対し、他方は自己の権利を貫徹しようとして控訴を提起したとしよう。この場合に、紛争の終了を願った一方の当事者はもはや原判決の取消しを求めることができないとすれば、多くの者は、相手よりも不利な立場に立たないようにするために、相手の態度にかかわらず控訴を提起しておくことになる。しかし、それでは不必要に控訴が誘発される。被控訴人は、控訴人と同様に原判決に対して不服を申し立てることができるとしておけば、平和を好む当事者からの不必要な控訴を誘発せずにすむ。こうした考慮に基づいて附帯控訴の制度が設けられた[13]。

附帯控訴の制度を機能させる前提として、控訴人の控訴により、控訴人勝訴部分を含めた原判決全体の確定が遮断され、事件全体が控訴審に移審するとしておくことが必要である。これは、前述のように、控訴不可分の原則として承認されている。

附帯控訴の従属性(293条2項)
附帯控訴は、原判決をもって訴訟を終了させようとした被控訴人を控訴人よりも不利な地位に立たせないようにするために認められたものであるから、控訴が取り下げられた場合、あるいは控訴が却下された場合には、効力を失う(293条2項)。ただし、附帯控訴が控訴期間内に提起され、控訴の要件を備える場合には、控訴審での独立の控訴として扱われる。これを独立附帯控訴という。控訴審での審理を続行するか否かは、独立附帯控訴人の意思にゆだねられる[1]。

方式(293条3項)
附帯控訴については、控訴に関する規定が適用されるが(293条3項1文)、控訴がすでに提起されているので、附帯控訴状は控訴裁判所に提出してすることができる(293条3項2文)。附帯控訴状の必要的記載事項は、原判決に対して附帯控訴を提起する旨である(形式的意味での附帯控訴)。原判決のどの部分の取消し・変更を求めるかは、必要的記載事項に含まれない。なお、附帯控訴の語は、具体的な取消申立てを含んだ意味でも使われることもある(実質的意味での附帯控訴)。

附帯控訴は、相手方の控訴により判決の確定が遮断され、事件が控訴裁判所に移審していることを前提にするので、確定遮断効も移審効もなく、したがって控訴ではない。形式的意味での附帯控訴は、その後に原判決のいずれかの部分について取消し・変更の申立てをなす意思があることを明確にし、その申立ての前提になる行為にすぎない。形式的意味での附帯控訴は、あまり意味のない形式的な行為であるが、書面でなすことが要求されている。

「附帯控訴状」という標題の付されていない書面(例えば準備書面)において、具体的取消申立てが記載されている場合には、形式にとらわれることなく、その書面も附帯控訴状として取り扱うべきであるかが問題となる。準備書面の直送制度がなかった旧法下において、最高裁判所昭和49年7月22日判決・金融法務事情733号31頁は、これを肯定した。直送制度を設けている現行法において、直送された準備書面にこの判旨が妥当するかは、微妙な問題となる。決断に迷うところではあるが、附帯控訴の提起の方式を控訴のそれと同じにした趣旨(原判決が被控訴人の有利にも変更されうる状態になったことを控訴人に明確に知らせること)を尊重して、直送された準備書面では附帯控訴状の代用はできないと解すべきであろう。

控訴審における新請求との関係
)被控訴人の新請求をどのように位置づけるかについては、次のように見解が対立している。
  1. 附帯控訴必要説  原判決と異なる内容の判決を求めるためには附帯控訴が必要であり、このことは控訴審における新請求にも妥当する。附帯控訴が293条により効力を失えば、新請求の訴訟係属も当然に失われる。
  2. 附帯控訴不要説  「被控訴人の原判決変更の申立ては、有効な附帯控訴を前提にする」との命題は、原判決で裁判された事項について原判決の内容の変更を求める申立てについてのみ妥当する。控訴審における新請求は、原判決で裁判されておらず、附帯控訴の範囲には含まれず、附帯控訴は不要である。控訴が却下されあるいは取り下げられても、新請求についての審判要求は当然には効力を失わず、控訴審はそれについて審判することができる。

かつては附帯控訴不要説が主流であったが、現在は必要説が多数説となっている。しかし、当事者が判決を求めれば、裁判所をそれに応えるのが原則であり、この原則は控訴審における新請求にも妥当する。控訴の却下・取下げは、被控訴人の新請求についての判決要求を無視することを正当化する十分な理由とはならない。附帯控訴不要説が正当である。

)控訴人の新請求も、控訴の取下げによっては当然には効力を失わず、被控訴人の応訴の利益(当該請求について自己に有利な判決を得る利益)を擁護するために、訴えの取下げによらせるべきであり、新請求について判決を欲する被控訴人が訴えの取下げに同意しない場合には、その訴訟手続において判決がなされるべきである。

)控訴の取り下げにもかかわらず新請求について判決がなされるべき場合には、控訴審が引き続き審理裁判することになるが、新請求についての審理の進行の度合いを考慮して第一審に移送することもできるとすべきである。(以上につき[栗田*1980a])

2.7 第一審判決についての仮執行宣言(294条・295条)

原告の給付請求を認容する判決に対して被告は不服を申し立てることができるが、その不服申立がなされていない請求認容部分がある場合には、その部分について執行を迅速になしうるようにするのが適当である。そこで、被告から不服申立のない請求認容部分については、原告からの申立てにより、控訴裁判所は決定で原判決に仮執行の宣言をすることができるとされている(294条。一部認容・一部棄却判決に対して原告のみが控訴し、被告が控訴も附帯控訴も提起しない場合が代表例である)。この決定がなされた後でも、控訴不可分の原則により当該部分が未確定であることには変わりはなく、被告がその後にその部分について不服を申し立てることは許される。

この仮執行宣言の申立てを却下する決定に対しては、即時抗告をすることができる(295条ただし書)。迅速な権利の実現について原告が有する利益を尊重してのことである。

他方、これ以外の仮執行に関する控訴審の裁判に対しては、不服を申し立てることができない(295条本文)。これに該当するのは、次のものである。

2.8 審 理

口頭弁論による審理の原則と例外
控訴が適法な場合には、口頭弁論期日を開いて審理するのが原則となる。控訴棄却の場合にもこの原則は妥当するが、例外がある。それは、訴えが訴権の濫用と目される場合である。この場合には、第一審においては、被告とされた者の負担軽減のために、訴状を被告に送達することなく訴えを140条により却下することが許される。この判決に対して控訴が提起された場合には、控訴状を被告に送達することなく控訴を棄却することも許される(第一審判決の正本を被告に送達することも必要ない)。濫用的な訴えは、裁判所と原告との間の問題として解決してよく、控訴状の送達や口頭弁論の実施による無用な負担から被告を解放しようとする配慮に基づく。この理は、不適法なことが明らかであって当事者の訴訟活動により適法とすることが全く期待できない訴え一般に妥当する(最判平成8.5.28・判例時報1569号48頁)。

口頭弁論の範囲(296条
処分権主義により、控訴審の審理裁判の範囲は、当事者の不服申立てにより定まる。296条は、審理すなわち口頭弁論の範囲についてこのことを規定している。同条1項にいう、「第一審判決の変更を求める限度」は、304条の「不服申立ての限度」と同じである。例えば、原告がα債権とβ債権の支払請求の訴えを提起し、両請求とも認容され、被告が控訴して原判決中β請求認容部分のみの取消しを求める場合には、口頭弁論はこの部分に限定される。

これ以外に、控訴審における新請求も審理裁判の対象となる。新請求は、原判決によって裁判されていないのであるから、原判決に対する不服申立ての内容にはならないが、控訴審において新請求の提起が許されることにより、控訴審の審理裁判の対象となるのである。

続審主義(296条2項・298条
控訴審においては、第一審で収集された資料に加えて、控訴審で収集された資料に基づいて第一審判決の当否を判断する。これを続審主義という[2]。控訴審における審理は、第一審の審理の続行である。したがって、第一審における訴訟行為は、控訴審においても効力を有する(298条1項)。しかし、裁判官は交代しているので(23条1項6号参照)、第一審で収集された資料を控訴審の裁判の基礎資料とするために、「当事者は、第一審における口頭弁論の結果を陳述しなければならない」。第一審における弁論の更新(249条2項)と同趣旨である。結果陳述がなされない場合には、その後の弁論は許されるべきではなく、その結果、控訴取下げが擬制される(292条2項・263条)。

攻撃防御方法の提出(298条2項・299条・301条)──新資料提出権
当事者は、控訴審において新たな資料を提出することができる(原審の口頭弁論終結前から存在する未提出資料でもよい)。この権能を新資料提出権という(「弁論の更新権」と呼ばれることが多いが、誤解を招きやすい。ここでの「更新」が、「弁論の更新」(249条2項)における更新と意味が異なることに注意。この講義では、新資料提出権と言い換える)。ただし、原審における審理を充実させて審級制度をよりよく機能させるために、攻撃防御方法の提出の適時性は、第一審の訴訟経過を含めて判定される。すなわち、
控訴審の裁判長は、当事者の意見を聴いて、控訴審における新たな攻撃防御方法の提出をすべき期間を定めることができ、この期間を懈怠した者は、説明義務を負う(301条)。

控訴審における新訴の提起297条143条以下・300条・301条)
訴訟の途中で紛争実体が変化する場合があり、また、実体は同じでもよりよい解決のために請求を変更するのが適当な場合もあるので、控訴審においても訴えの変更あるいは反訴の提起が許される(297条による143条以下の準用)[11]。ただし、反訴の提起の要件は、訴えの変更の要件よりも緩やかであり、第一審での審理内容と関連性の低い場合があるので、控訴審においては相手方の同意が要求されている(300条1項)。相手方が異議を述べずに反訴の本案について弁論をしたときは、反訴の提起に同意したものとみなされる(300条2項)。

とは言え、重要なのは、相手方の審級の利益の保護である。(α)請求の基礎の同一性をどの範囲で認めるかの問題と関連するが、これを広く認める場合には、訴えの変更であっても、それが被告の審級の利益を害する度合いが強いと判断されるときには被告の同意が必要であるとすべきである(例えば、第一審では占有回収の訴えを提起し、所有権確認請求あるいは所有権に基づく引渡請求を追加する場合に、第一審でこの訴えの変更を許容するためには請求の基礎が同一であるとと言わざる得ないが、それを前提にしても、控訴審でこの訴えの変更をするについては、原則として、被告の同意を要すると解すべきであろう)。そして、(β)原告の訴え変更については被告の同意が要求されていないこととのバランス上、反訴請求が本訴請求と基礎を同一にする範囲では、原則として、反訴の提起には原告の同意は必要ないとしてよい。反訴請求が本訴請求と関連する場合には、請求の基礎を同一にするとの評価を受け、同意は不要とされやすいが、常にそうなるわけではない。例えば、不動産の所有権確認請求の本訴に対して、控訴審において賃借権確認の反訴が提起される場合や、占有保全の訴えに対して、控訴審に所有権に基づく引渡請求の反訴が提起される場合に、同意を要するとすべきであろう。

選定者に係る請求の追加も、相手方の同意が必要とされ、また、反訴の場合と同じ要件の下で同意が擬制される(300条3項)。例えば損害賠償請求訴訟において、選定者に生じた損害額が重要な審理事項になり、これについて第一審で審理されていないので、相手方の審級の利益を保護する必要があるからである。

控訴審における審理を迅速に進めるために、裁判長は、当事者の意見を聴いて、訴えの変更、反訴の提起、選定者に係る請求の追加をすべき期間を定めることができ、この期間を懈怠した者は、説明義務を負う(301条)。

なお、人事訴訟では、確定した本案判決に別訴禁止効が認められているので、訴えの変更のみならず、反訴も控訴審における口頭弁論の終結まで緩やかな条件の下で認められている(人訴法18条)。

2.9 裁 判

控訴審における直接の裁判の対象は、(α)原判決に対する不服申立て、及び(β)控訴審における新訴であるが、ここでは主として前者を取り上げる。後者については、控訴裁判所は第一審裁判所と同じ立場に立つ。

処分権主義(不利益変更禁止・利益変更禁止の原則)(304条
控訴審においても、処分権主義が妥当する。すなわち、審理裁判の対象は当事者が特定し、当事者が求める範囲で原判決は変更される。このことから、次の2つの原則が導かれる。
これら2つの原則は、いずれも処分権主義に根ざす。それを素直に表明しているのが利益変更禁止の原則であり、これから不利益変更禁止の原則を導くことができる。しかし、実際には、利益変更禁止の原則より不利益変更禁止の原則のほうが問題にされることが多い。なお、「不利益変更禁止の原則は、控訴人は原判決より不利な判決を受けることはないとすることにより、安心して控訴できるようにするための原則である」と説明する見解もあるが、不適切である。相手方からの附帯控訴があれば、原判決より控訴人に不利な判決がなされうるからである。立法政策としても、控訴提起を促進する政策をとる理由は見あたらない。

訴え却下判決と請求棄却判決のいずれが原告にとって不利であるかは、場合により異なるが、通常は請求棄却判決の方が原告にとって不利であると考えられている。その考えが妥当する範囲では、第一審の訴え却下判決に対して原告のみが不服を申し立てている場合に、控訴審が原判決を取り消して請求棄却判決をすることは、不利益変更になり許されない。控訴審は、307条ただし書により自判でき、請求を棄却すべきであると判断する場合には、控訴棄却に止める(上告審に関するものであるが、最高裁判所 昭和61年7月10日 第1小法廷 判決(昭和58年(オ)第582号)参照)[12]。

これが判例の立場である。しかし、不利益変更禁止の原則が処分権主義の上訴審における発現の一つに過ぎないことを考慮すると疑問がある。
  1. 訴え却下判決に対する上訴により、上訴人は本案判決を求めているのである。その際に、「自己に不利益な本案判決であれば不要である」との判決要求は、許されないとしてよい(原告が、訴えの提起の際に、「請求が棄却されるのであれば訴えの却下を求める」との意思を表明することが許されないのと同様である)。そして、訴え却下判決が取り消されれば、訴えに対して本案判決をしなければならず、これは原告の処分権の行使として提起された訴えに対する応答であり、処分権主義に反しない。
  2. 少なくとも、訴え却下判決を上告審が破棄して原審に差し戻した場合にまで上告審における不利益変更禁止の効果を延長すべきではない。差戻審は、本案審理の結果に従い請求棄却判決をすることができると解すべきである。
  3. 論理的にはいずれの見解も成り立ちうるが、結論を分けるのは、訴え却下判決に対して上訴を提起する者の意思(請求棄却判決が下されるのであれば上訴棄却にとどめてほしいとの意思)をどの程度尊重し、本案判決による紛争解決をどの程度重視するかであろう。訴え却下判決にも、これに対する上訴を棄却する判決の理由中の判断にも、実質的な紛争解決機能が十分あることを認めながらも、それでも、本案判決による法律関係の確定を優先させてよい。

ともあれ、判例の立場を前提にすれば、適法な訴えを却下する判決が確定することになるが、この判決にも却下判決としての既判力を肯定するべきである。それは、一般理論に従えば、却下の理由となった判断に生ずる。その判断を覆す新たな事情が発生しない限り、新たに提起される同趣旨の訴えも不適法であるとすべきである(不当な判断であるから既判力は生じないという考え採用できない)。

不利益変更禁止原則が適用されたその他の裁判例として、次のものがある。
XがYに対して300万円の債権を有している。時効の完成まで後1カ月のところで、AがXになりすまして弁護士Bに訴訟委任をし、Bは、X名義の訴訟委任状がAによって偽造されたものであることに気づかずに訴えを提起した。裁判所は、弁論準備手続を経て、Yに対する貸付けをしたときのXの代理人R等を証人として尋問し、さらにYも尋問した。その結果、請求を棄却すべきとの心証を得たが、口頭弁論の終結日に委任状の偽造が発覚し、Xの所在がつかめないためその追認が得られないので、訴え却下判決を言い渡した。訴え提起から1年後のことである。その1週間後にこのことを知ったXが、従前の訴訟追行を全部追認の上、上訴を提起した。Xは控訴審の第一回口頭弁論期日において、追認の意思を明確にしたが、その後の期日には出頭しなかった。控訴裁判所は、第一審の訴訟経過ならびに控訴審におけるXの訴訟追行の態度から見て、請求に理由がないとの心証を得、かつ、民訴307条ただし書により自判しようと思えばすることができると考えている。控訴裁判所は、どのような判決をすべきか。

控訴審判決に対して上告が提起されないまま確定した後で、その1ヶ月後にXが同じ債権について再度訴えを提起した場合に、裁判所はどのようにすべきか。今度はXは、十分な訴訟資料を提出して債権の存在を証明できそうであるとする。

ヒント:時効の点については、裁判上の催告の法理にも言及すること。

裁判の対象
不服申立ての当否は、控訴裁判所が訴えについて審理し、それについてなされるべきであると考える判決内容と原判決の内容とを比較してなされる。原判決は不服申立人に有利な方向で変更されるべきであると判断されると、取り消される。原判決が取り消されると訴えに対する応答(判決)がなくなるので、原則として控訴審が自ら判決し、例外的に第一審に判決させるために事件を差し戻しまたは移送する。原判決を取り消す必要がなければ、控訴は棄却される。したがって、訴えの適否及び請求の当否は控訴審で審理されるが、それが控訴審の裁判の対象となる(判決主文で判断される)のは、原判決が取り消された場合のみである。そこで、控訴審の直接の審理裁判の対象は、訴えや請求自体ではなく、不服申立て(原判決の取消申立て)であると言われる。

職権調査事項についての例外
第1審判決の取消し及び変更は、不服申立ての限度においてのみするのが原則であるが、取消しが申し立てられていない部分について職権で訴えを却下すべき事由が存在する場合には、控訴審は、当該部分についてなされた本案判決を取り消して訴えを却下する。

例えば、公文書非公開決定処分取消請求訴訟の第一審係属中に非公開決定処分の一部が取り消された場合には、その部分に関して訴えの利益は消滅するが、前記部分について第一審が本案判決をし、控訴によりこの部分を含めて事件全体が控訴審に移審した場合には、訴えの利益の消長は職権調査事項であるから,控訴審は,民訴法304条にかかわらず,同部分につき職権で第一審判決を取り消して訴えを却下すべきである(最高裁判所 平成15年11月11日 第3小法廷 判決(平成10年(行ヒ)第54号))。

取消しと変更
304条などでは第一審判決の「取消し及び変更」という表現が用いられている。ここでいう変更は、原判決の取消し後になされるべき判決内容を指す。例えば、控訴人(被告)が「原判決を取り消す、原告の請求を棄却する、との判決を求める」と述べている場合には、「原告の請求を棄却する」の部分が「変更」に該当する。この意味での変更の申立ては、理論的に突き詰めて考えれば、必ずしも必要はない。例えば、敗訴被告の控訴に基づき控訴審が原判決を取り消せば、第一審請求について判決がなされるが、これは原告の訴えに対する応答としてなされるのであり、被告の控訴に対する応答としてなされるのではないからである。しかし、それでも、304条および特に296条を考慮すれば、被告は原判決取消し後になされるべき判決内容を特定すべきである。

控訴審判決においては、通常、前記の論理にしたがって主文が書かれる。例えば、請求認容判決に対して被告が控訴し、控訴審が請求を棄却すべきであると考える場合には、「原判決を取り消す。被控訴人の本件請求を棄却する」と記載する。しかし、一部認容などの場合に、上記の論理に従って主文を構成したのでは主文の記載が複雑になり、わかりにくくなる場合がある。その場合には、「原判決を次のように変更する。・・・」と記載する(この場合には、原判決取消しの文言は省略される[15]。その結果、「変更する」という文言は、「原判決を、変更後の判決と両立しない範囲で、取り消す」との趣旨を含んでいると理解されることになる)[4]。

控訴審で原告が請求を減縮し、その結果原判決の内容の一部が効力を失った場合には、その点を明確にするために、判決主文において、例えば「被控訴人の請求の減縮により、原判決主文第三項は、次のとおり変更された。・・」と記す[6]。

控訴棄却(302条
第一審判決が既判力の生ずる部分について正当であると判断するときは、控訴裁判所は、控訴を棄却する。原判決の理由中の判断に誤りがあっても、既判力の生ずる判断に変更がなければ、原判決を変更する必要はなく、控訴は棄却される。

なお、予備的相殺の抗弁を認めて請求を認容した第一審判決に対して被告が不服を申し立て、相殺以前に原告主張の請求権が存在しないことを主張して請求棄却判決を求め、それに理由がある場合には、請求棄却という主文に変更はなくても、既判力の生ずる理由中の判断に変更があるので、控訴審は、原判決を取り消した上であらためて請求棄却判決をする。これは、控訴認容判決と位置付けられる。

控訴権の濫用に対する制裁(303条

控訴認容(304条−309条)
控訴裁判所が、控訴人または附帯控訴人の不服申立てを正当と判断する場合には、不服申立ての限度で原判決を取り消す。取消原因は、次の2つに大別される。
判決の手続の法律違反(306条
これは、判決の成立過程(評決手続、判決書作成手続、言渡手続)の違法を指す。例えば、(a)除斥原因のある裁判官が裁判に関与したとき、あるいは、(b)判決原本に基づいて言い渡すべき場合に判決原本を作成することなく言い渡したときがその代表例である(312条2項の絶対的上告理由も参照)。この種の違反がある場合には、たとえ判決内容が正当であっても必ず取り消した上で、その違反が当事者の審級の利益を害する重要なものであるか否かにしたがって、差戻しまたは自判をする。自判の場合には、取り消された原判決と同一の内容であってもかまわない(瑕疵のある判決を取り消して、瑕疵のない同じ判決をすることに意味がある。この取消しと新裁判は260条1項(仮執行宣言の失効)にいう「変更」には当たらない)。判決の手続に瑕疵があっても、瑕疵が軽微である場合には、取り消さなくてもよい。例えば、適法に作成された判決原本に基づいて、その言渡しのみを除斥原因のある裁判官がした場合、判決言渡期日の通知(規則156条)を懈怠した場合。

原判決が取り消されると、その部分について訴えに対する裁判所の応答義務が復活する。この応答は、次の3つの裁判所のいずれかでなされる。
必要的差戻し(307条
本文  例えば、第一審が有効な仲裁契約の存在を認めて訴えを却下した場合には、控訴審の審理は、訴えの適法性(有効な仲裁契約の存否)の点についてまずなされるべきである。控訴審が、仲裁契約は無効であり原判決は取り消されるべきであるとの判断を固めた場合には、その時点で口頭弁論を終結し、請求についての審理裁判を第一審裁判所にさせることが、当事者の審級の利益に合致する。そこで、307条は、訴えを不適法として却下した第一審判決を取り消す場合には、控訴審は事件を第一審裁判所に差し戻すべきであるとした[8]。

ただし書  しかし、却下の理由となった訴訟要件の問題が本案の問題と密接に絡んでいる場合には、第一審が訴えを却下していても実質的に見れば本案の審理・判断がなされていると考えられる場合がある。そのような場合には、控訴審は、原判決を取り消して、自ら本案について判決することができる(307条ただし書)[14]。307条ただし書が適用されるためには、当事者の審級の利益が実質的に害されない程度に第一審においても本案について審理・判断がなされていることが必要であると解すべきである(旧法下の事件であるが、最高裁判所昭和37年12月25日判決・民集16巻12号2465頁参照)。 307条ただし書における「弁論をする必要」は、「控訴審が本案の裁判をするために弁論をする必要」を指すと理解するのが文言に素直であるが、しかし、そのように理解すると、控訴審が本案についても審理をしてしまえば常にただし書が適用されることになり、適当ではない。したがって、ただし書の「弁論をする必要」は「当事者の審級の利益を擁護するために第一審で弁論をする必要」を意味すると理解すべきである。なお、最高裁は、訴え却下判決に対して原告が上訴した場合についても不利益変更禁止の原則の適用を認めていることに注意する必要がある。

以上の点をふまえて、 ≪第一審は訴えを不適法としたが控訴審は訴えを適法と判断した場合に、控訴審がとるべき措置≫を整理すると、次の表のようになる。

上訴人
控訴審の本案についての判断
請求認容判決がなされるべきである。 請求棄却判決がなされるべきである。 本案判決をするためには「事件につき更に弁論をする必要」がある。
原告 原判決を取り消して、請求認容判決をする。 (α)不利益変更禁止原則との抵触を避けるために、原判決を取り消して、原審に差し戻す。(β)ただし、被告が紛争の迅速な解決のために控訴棄却判決を申し立てているときには、控訴審は、控訴棄却判決をするにとどめることもできるとすべきである。(注1) 一審判決を取り消して、原審に差し戻す。
原告・被告双方 原判決を取り消して、請求棄却判決をする。
被告 不利益変更禁止原則に抵触しないようにするために、原判決を取り消して、原審に差し戻す。(注2)
(注1)  (β)を原則にして、(α)を例外とすることも考えられる(例えば、「控訴審は、不利益変更禁止原則に従い、控訴棄却判決をするにとどめる。ただし、被告が請求棄却判決を望んでいる場合には、不利益変更禁止原則との抵触を避けるために、原判決を取り消して、原審に差し戻すことができる」)。
(注2)
  控訴審の口頭弁論終結前の段階で原告が闘争意欲をなくして訴え却下判決でもかまわないと述べている場合には、控訴棄却判決をするにとどめることも考えられるが、通常は、原告がそのように行動することはないであろう。


任意的差戻し(308条
307条に該当しない場合でも、当事者の審級の利益を守るために第一審でさらに審理・裁判をすることが必要である場合には、裁判所の裁量により原判決を取り消して事件を原審に差し戻すことができる。これに該当する取消事由は、次の2つに分類される。

) 訴訟手続の法律違反  弁論終結後の判決成立過程の違法は、306条の問題となるので、それ以外の手続上の違法が308条の対象となる。異議権喪失の対象となる事項の違法については、異議権の喪失が認められれば(90条)、その違法を理由に原判決が取り消されることはない。異議権の喪失にならない場合に手続上の違法を理由に原判決を取り消すか否かは、控訴裁判所の裁量に委ねられる。
)その他  例えば、第一審の法解釈が不当であるために、正当な解釈に従った場合に審理されるべき事項の審理がまったく不十分である場合、あるいは、損害賠償請求訴訟において被告の賠償責任が否定されたため損害額について審理されていなかったが、控訴審は被告の賠償責任を肯定する場合。

差戻審における審理・裁判
差戻審は、控訴審の判断(取消理由)に拘束される(裁判所法4条)。差戻審は、差戻し前の第一審と控訴審の続審であり、当事者の従前の訴訟行為は明示的または黙示的に取り消されていない限り効力を有する(308条2項に注意)。当事者がこれまでに提出した事実と証拠も差戻審における裁判の基礎資料となるが、裁判官が交代しているので、弁論の更新(当事者による従前の弁論の結果陳述)が必要である。

控訴審の判決における仮執行宣言(310条
控訴審は最後の事実審であること、金銭債権については不当執行がなされても理念的には原状回復が比較的容易であることを考慮して、金銭給付請求について仮執行宣言の特則が設けられている。控訴審は、申立てがあるときは、仮執行宣言が不必要であると認める場合を除き、無担保で仮執行できることを宣言しなければならない。この仮執行宣言の裁判に対しては、不服を申し立てることができない(295条)。なお、第一審の請求認容判決に対する控訴を棄却する場合には、第一審判決が債務名義になり、控訴審は控訴棄却判決の中で、第一審判決を仮に執行することができることを宣言する。

その他
控訴審の判決書における事実および理由の記載は、第一審判決書を引用してすることができる(規則184条)。この引用には、次の2つの方式がある。

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2000年5月28日−2013年7月26日