目次文献略語

民事訴訟法講義

上 訴 2


関西大学法学部教授
栗田 隆

3 上 告


3.1 概 説

上告の意義
上告は、原審の事実認定を前提として、それに適用される法令の解釈の誤り、法令の適用(事実の法的評価)の誤りについて是正を求める、判決に対する上訴である。

広い意味での上告は、次のように分類される。
参照ページ:各地の裁判所東京高等裁判所書式例 の中に、上告状等のサンプルがある。

3.2 上告提起

上告の対象となる裁判と上告裁判所(311条
一般の場合(審級制度の順に従って上告がなされる場合)
飛越上告の場合  通常であれば控訴がなされるべき場合に、控訴審を省略して上告することも認められている(281条1項ただし書)。ただし、当事者が判決の言渡し後にその旨の合意をすることが必要である。
上告の理由(312条
上告審は、原審の法令の解釈・適用の誤りの是正を目的とするが、最高裁判所の負担軽減のために、上告受理申立ての制度が設けられ、これとの機能分担により、最高裁への上告提起の方法による上告の理由は、憲法違反と重要な手続違背とに制限されている。高等裁判所への上告は、上告受理申立ての制度を設けてまで負担軽減を図る必要はないので、判決に影響を及ぼす法令の違反も上告理由とされている。

いかなる事由を理由に上告をすることを許容するかは審級制度の問題であって,憲法81条の規定するところを除いては、すべて立法の適宜に定めるところにゆだねられているから、最高裁判所への上告理由の制限は、憲法32条に違反しない(最高裁判所 平成13年2月13日 第3小法廷 判決(平成12年(行ツ)第302号))。

最高裁・高裁に共通の上告理由
) 憲法の違反(312条1項)

)重要な手続違背(絶対的上告理由)(312条2項)  これらの手続違背がある場合には、判決内容の当否にかかわらず、原判決を破棄しなければならない(325条1項1文前段)。
上記のうちで、1号・2号・4号はその全部が、6号はその一部が、再審事由でもある(338条1項参照)。他方、再審事由でありながら絶対的上告理由として明規されていないものもいくつかある。それも絶対的上告理由に準じて扱うべきであり、325条2項による救済にとどめるべきではない。例:
高裁への上告理由
高等裁判所への上告においては、判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反を理由とすることができる。 法令は、成文法に限られない(規則191条2項かっこ書参照)、

3.3 控訴の規定の準用(313条

準用される規定を一瞥しておこう。
他方、次の規定は準用されない。

3.4 上告提起の方式等(314条317条

原裁判所への提出
上告の提起は、上告状を原裁判所に提出してする。上告理由書も原裁判所に提出する。こうすることにより、次のことが可能となる(下記のうちでaとbは控訴の提起の場合でも同様であるが(aにつき287条1項参照)、c以下は上告提起に特有のものである)。
  1. 不適法で不備を補正することができない上告を原裁判所が決定で却下する(316条1項1号)。
  2. 上告提起により原判決の確定が遮断されたか否かを原裁判所が認識する。
  3. 原裁判所の裁判長が上告状の審査をする(314条2項)。
  4. 原裁判所が上告提起通知書を両当事者に送達し(規則189条1項)、上告状を被上告人に送達する(同条2項)。
  5. 上告理由書が所定期間内に提出されない場合に、上告を原裁判所が決定で却下する(316条1項2号)。

上告期間も原判決の送達から2週間という短い期間であるので、上告状には、原判決を特定して、上告を提起する旨を記載すれば足り、上告の理由まで記載する必要はない。もちろん、上告理由も記載できるのであれば記載する方が望ましい。上告の提起にあたっては、上告により得ようとする利益を基準にして、訴え提起の手数料額の2倍の手数料を納付しなければならない(民訴費用法別表第1第2項)。

上告提起通知書の送達
原裁判所は、裁判長が上告状を却下する場合又は原裁判所が上告を却下する場合を除き、上告提起通知書を両当事者に送達する(上告理由書及び附帯上告が提起される場合に附帯上告理由書の提出期間の起算点となる重要な通知であるので(法315条1項、規則194条)、送達する)。被上告人には、これと併せて、上告状を送達する。原裁判所の判決書の送達前に上告の提起があったときには、判決書も同時に送達する(規則189条3項)。

上告理由書
上告状に上告理由が記載されていない場合には、上告人は、上告提起通知書の送達を受けた日から50日以内に上告理由書を原裁判所に提出しなければならない(法315条1項、規則194条)。

原裁判所の決定による上告の却下(316条)
原審は、次の場合には、決定で上告を却下する。
上告状及び上告理由書提出期間内に提出された書面のいずれにも民訴法312条1項及び2項に規定する事由の記載がないときは、原裁判所は、補正命令を発すべきではなく、直ちに決定で上告を却下すべきである(最高裁判所 平成12年7月14日 第2小法廷 決定(平成12年(オ)第547号))。原審が直ちに却下することなく補正を命じて、補正命令により定められた期間内に前記事由を記載した書面を提出したとしても、これによって上告が適法となるものではない。この場合には、上告審は、民訴317条1項により、決定で上告を却下する(同前)。


高等裁判所への上告については、原審(地方裁判所)による却下決定に対して即時抗告を提起することができる(316条2項)。他方、最高裁判所への上告については、即時抗告を提起することはできない(裁判所法7条)が、許可抗告は可能である(原審の却下決定は、地方裁判所がしたとすれば328条1項の決定に該当するから抗告が許され、したがって337条ただし書の要件を充足し、同条本文により、高等裁判所の許可があれば抗告をすることができる。実例として、最高裁判所 平成23年7月27日 第3小法廷 決定(平成23年(行フ)第1号)がある)。

上告裁判所の決定による上告の却下・棄却(317条
訴訟代理人にとって、上告が棄却されるか却下されるかは、依頼者との関係で重要であることに配慮して、次のように、却下と棄却の区分がなされている。

3.5 上告受理の申立て(318条

意義  最高裁判所の負担を軽減するために、312条1項・2項に該当しない場合には、「法令の解釈に関する重要な事項を含むものと認められる事件」についてのみ、最高裁が決定により上告審として事件を受理することができる(318条1項)。最高裁に上告審として事件を受理することを求める申立てを「上告受理の申立て」という。

申立て  上告受理の申立てにあたって、申立人は、318条1項所定の事件に該当することを示さなければならない(規則199条1項)。上告提起と上告受理申立てとの間で、機能を分担させるために、上告受理申立てにおいては、上告提起の理由とすべき事由(憲法違反と絶対的上告理由に該当する事由)を理由とすることができないとされている(法318条2項)。しかし、上告の提起と上告受理申立てを一通の書面ですることは、許される(規則188条)。

上告受理申立ての期間も、原判決の送達の時から2週間の不変期間である(318条5項・313条・285条)。申立書には原判決の表示とその判決に対して上告受理申立てをする旨の記載をしなければならないが(318条5項・313条・286条2項)、申立ての理由を記載した書面は、上告受理申立て通知書の送達を受けた日から50日以内に提出すれば足りる(法318条5項・315条1項、規則199条2項・194条)。

上告受理申立てについても上訴不可分の原則が適用され、申立てにより、申立てがなされた時(申立書が原裁判所に提出された時)に、原判決全体の確定が遮断され(116条2項)、原裁判所による却下(316条1項)がなければ、事件全体が上告審に移審する(移審の時期を問題にする必要は少ないが、上告提起の場合と同様に、規則199条2項・197条1項により原審から事件の送付があった時としてよい)。

不適法な上告受理申立ての却下
受理申立の利益を有しない者による受理申立て、受理申立権消滅後の受理申立てのように、不適法で補正の余地のない受理申立ては、原審が決定により却下する(318条5項・316条1項1号)。この決定に対しては、即時抗告をすることができない(最高裁判所に対しては許可抗告のみが可能であるので(裁判所法7条)、318条5項は316条2項を準用していない)。しかし、最高裁判所への上告を原審が却下した場合と同様に、許可抗告は可能である。

原審が却下しない場合には、最高裁がその受理申立てを決定により却下することができる(事例として、最高裁判所 平成23年2月17日 第1小法廷 決定(平成21年(オ)第1022号)がある。318条5項は317条1項を準用していないので、類推適用と表現すべきことになろう)

受理の要件  最高裁判所は、次の事件について、上告を受理する決定をすることができる(318条1項)。
ここでいう「法令」は、成文法に限られない。事実認定に関する法令も含まれる(事例として、最高裁判所 平成18年1月27日 第2小法廷 判決(平成15年(受)第1739号)参照[5])。「解釈」は、広義であり、狭義の解釈のみならず適用(要件(通常は、解釈により精密化された要件)を充足するか否かの判断)も含む。「重要な事項」は、「最高裁判所が実質的な判断を示すことが必要な事項」といった程度の意味である。個別事件における当事者の救済の必要性では足りず、法令の解釈の統一の必要性が要求されるとする立場もあるが([藤原*2001a2]47頁)」、そこまでは要求されない([梅本*民訴v4]1061頁)。「判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反」(325条2項)が存在することは、必要でない。原審と結論は同じでも理由付けが異なる場合はもちろん、結論も理由付けも同じであっても、高等裁判所の判断が分かれている問題、あるいは最高裁の判例がない問題などについては、最高裁が判断を示すこと自体に重要性が認められる場合がある。

上告受理の申立てに係る事件が318条1項の事件に当たるか否かは、上告裁判所である最高裁判所のみが判断し得る事項であり、原裁判所は、事件が同項の事件に当たらないことを理由として、同条5項、316条1項により、決定で上告受理の申立てを却下することはできない(最高裁判所平成11年3月9日第1小法廷 決定(平成11年(許)第8号))。

上告不受理  不受理の場合には、「本件を上告審として受理しない」との主文を掲げる(「上告受理申立てを棄却する」とは言わない。趣旨は同じであるが、表現がそのように固定されている)。この決定の理由は、簡潔でよい。負担軽減のポイントである。受理する場合でも、上告受理の申立ての理由中に重要でないと認めるものがあるときは、これを排除することができる(318条3項)。排除の理由も、簡潔でよい。

上告受理の効果  受理が決定されると、上告があったものとみなされる(318条4項)。この場合に、最高裁判所は上告受理の申立ての理由中に重要でないと認めるものがあるときは、これを排除することができる(318条3項)。上告受理申立ての理由は、排除されたものを除き、320条との関係では上告理由とみなされ。不服申立ての範囲は、これに基づいて定められ、上告審は、その範囲で原判決の当否を調査する義務を負う(ただし、その範囲を超えて322条により職権で調査することは妨げられない)。

上告審判決における表現は、次のようになっている。  
原判決が複数の請求について上告受理申立人に不利な判決をした場合の取扱いはややこしい。複数の請求(α請求とβ請求)を棄却する内容の控訴審判決に対して原告が上告受理申立てをした場合を例にすると、次のようになる。

3.6 附帯上告・附帯上告受理申立て

控訴審において附帯控訴ができるのと同様に、上告審において附帯上告あるいは附帯上告受理申立てをすることができる。 最高裁判所平成11年4月23日 第2小法廷 決定(平成10年(受)第644号、同年(オ)第2177号)は、上告受理の申立てに対して附帯上告を提起し、又は上告に対して附帯上告受理の申立てをすることはできないとする。313条・318条5項によって準用される285条所定の不変期間経過後は、上告人は上告受理申立てにより不服申立て範囲を拡張することはできず、上告受理申立人は上告により不服申立て範囲を拡張することができないこととのバランスをとろうとしたものと思われるが、しかし、附帯上訴制度の趣旨(被上訴人にも不服申立ての機会を与えることにより無用な上訴を防止すること)に鑑みれば、この結論は不当である。 原判決に不満はあっても紛争の早期解決のために上告の提起も上告受理申立てもしなかった被上告人のために、上告の提起に対して附帯上告受理申立ても、また上告受理申立てに対して附帯上告提起も認めるべきである。

附帯上告が上告と別個の理由に基づくものであるときは,当該上告の上告理由書の提出期間内に原裁判所に附帯上告状及び附帯上告理由書を提出してすることを要する(最高裁判所 平成17年4月19日 第3小法廷 判決(平成12年(受)第243号,平成17年(オ)第251号))。附帯上告受理申立てについても、同様である。

附従性の原則は、附帯上告についてのみならず、附帯上告受理の申立てについても妥当する(318条5項・313条による293条2項の準用。最高裁判所平成11年4月8日 第1小法廷 決定(平成10年(受)第475号、第476号))。

3.7 審理・裁判(判決)(319条326条

口頭弁論の実施
上告審が判決により上告に応答する場合には、口頭弁論を開くのが原則である。しかし、これには、次の例外がある。

口頭弁論を経ない上告の棄却(319条)  上告裁判所は、上告状、上告理由書、答弁書その他の書類により、上告を理由がないと認めるときは、口頭弁論を経ないで、判決で、上告を棄却することができる。 逆に、上告審で口頭弁論が開かれるときは、上告に理由があると認められる可能性が高いことに注意しなければならない。

民訴140条に該当する場合  上告審が原判決を破棄する場合には、口頭弁論を開くのが原則である。しかし、原判決破棄後にする自判の内容が、140条の規定により口頭弁論を経ずにすることができるものである場合には、原判決の破棄も、口頭弁論を開かずにすることができるとするのが判例の立場である。例えば、控訴審が請求を棄却した訴えについて,上告審が重複起訴にあたる不適法な訴えであると判断して口頭弁論を開かずに却下する場合には,訴えを却下する前提となる原判決破棄の判決も,口頭弁論を経ないですることができる(最高裁判所 平成14年12月17日 第3小法廷 判決(平成13年(行ツ)第205号,平成13年(行ヒ)第202号))。共同訴訟参加の申出が不適法でその不備を補正することができないものである場合も、同様である(最高裁判所 平成22年7月16日 第2小法廷 判決(平成20年(行ヒ)第304号))。

訴訟終了宣言の判決をする場合  訴訟の終了の宣言は,既に訴訟が終了していることを裁判の形式を採って手続上明確にするものにすぎないから,民訴法319条及び140条(同法313条及び297条により上告審に準用)の規定の趣旨に照らし,上告審において判決で訴訟の終了を宣言するに当たり,その前提として原判決を破棄するについては,必ずしも口頭弁論を経る必要はない(最高裁判所 平成18年9月4日 第2小法廷 判決(平成17年(オ)第1451号))。

口頭弁論を開くまでもなく原判決を破棄すべきことが明らかである場合  例えば、直接主義違反であることが事件の記録から明らかであり、そのことを理由に原判決を破棄し,事件を原審に差し戻す旨の判決をする場合には,必ずしも口頭弁論を経ることを要しない(最高裁判所 平成19年1月16日 第3小法廷 判決(平成18年(オ)第1598号)は、319条及び140条の規定の趣旨を援用して、この旨を判示した)。

調査の範囲(320条
処分権主義により、上告裁判所は、不服の申立てがあった限度においてのみ原判決の当否を調査し、変更することができる。例えば、α請求とβ請求を棄却している控訴審判決に原告が上告を提起して、α請求に関する部分についてのみ不服を申し立てている(原判決の破棄・差戻しを求めている)場合には、上告審は原審のβ請求棄却判決が不当であると判断しても、これを破棄することはできない。

不服申立ては、適法なものでなければならない。不服申立ての一部が不適法な場合には、その部分については上告却下の裁判がなされ、その余の部分について調査がなされる。
調査は、上告の理由に基づいてする。しかし、これに限定されるわけではない。最高裁は、不服申立ての範囲内であれば、適用されるべき法令の解釈・適用の誤りのように職権で取り上げることができる事由については、上告理由において主張されていなくても職権で取り上げて、その検討結果に基づき原判決を破棄することができる(322条325条2項参照。処分権主義の範囲内での職権行使)。上告人によって主張されている事由であるが、適法な上告理由に該当しない事由についても、適法な上告理由に該当しない旨を説示した後で、同様に職権でとりあげて検討することもある。こうした検討は、「職権による検討」という項目の下でなされることが多い。

原判決の確定した事実の拘束(321条
上告審は法律審であるので、原判決において適法に確定された事実は、上告裁判所を拘束する。ただし、原審の事実認定が不合理である場合には、その事実認定に上告審は拘束されない。自由心証主義を定める247条も、不合理な事実認定を許すものではない。例:
なお、原審が認定した事実を法的にどのように構成するかは、事実の評価ないし法の適用の問題であり、上告審は、原審が採用した構成に拘束されない。当事者から主張されていない法的構成を採用することもできる。例:
職権調査事項についての適用除外(322条325条
320条と321条の規定は、いわば原則規定である。上告審が職権で調査すべき事項にはこれらの規定は適用されないという広範な例外がある(322条)。そこにいう職権調査事項は、訴訟要件についての職権調査事項や絶対的上告事由・再審事由に限られない。実体法の解釈や適用の誤りも含まれ、また、釈明義務違反も事実認定に関する法令の違反も含まれる。

これらは、325条にいう「法令の違反」でもある。同条2項により、最高裁判所は、「312条第1項又は第2項に規定する事由がない場合であっても、判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反」があるときは、原判決を破棄することができるとなっているので、その職権調査の権限は、義務を伴わない権限である(325条1項において、高等裁判所については義務とされていることと対照的である)。 上告受理申立てがなされた場合に、318条1項の「法令の解釈に関する重要な事項」がないときでも、325条2項の(類推)適用を認めてよく、最高裁は、判決に影響を及ぼす法令違反を理由に原判決を破棄することかできる(ただし、経験則違反について325条2項の適用を認めることに否定的な見解もある:[藤原*2001a2]51頁以下)。

事実の探知  訴訟要件については、職権探知事項である限り、上告審は、当事者の主張していない事実も斟酌して裁判することができる。絶対的上告理由やこれに含まれない再審事由(338条1項10号)についても同様である。職権で調査の嘱託等の証拠調べをして、これにより探知された事実を理由に裁判をすることは少ないであろうが、裁判所に顕著な事実を理由にして裁判をすることはありうる。例:
上告審である高等裁判所から最高裁判所への移送(324条
上告裁判所である高等裁判所は、最高裁判所規則で定める事由(規則203条)があるときは、決定で、事件を最高裁判所に移送しなければならない。

原判決の破棄(325条
312条1項(憲法違反)又は2項(絶対的上告理由)に規定する事由があるときは、上告裁判所は、原判決を破棄しなければならない(325条1項前段)。

312条に規定する事由がない場合でも、判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反がある場合には、上告審が
差戻し・移送(325条
上告審が自判できる場合以外は、 原審あるいは原々審に差し戻すか、または、これと同等の他の裁判所に移送する。差戻しまたは移送を受けた裁判所は、新たな口頭弁論に基づき裁判をする。その裁判所は、上告裁判所が破棄の理由とした事実上及び法律上の判断に拘束される(325条3項)。原判決に関与した裁判官は、差戻審に関与することができない(325条4項)。関与を許すと、彼が自己の見解に固執する結果、上告審の判決の趣旨の実現を妨げる可能性があるからである。

自判(326条
上告裁判所が、差戻し又は移送の裁判をすることなく、原審に代わって事件について裁判をすることを自判という。原審が控訴審である通常の場合について言えば、控訴を認容した原判決を破棄し控訴を棄却して第一審判決を確定させる場合や、控訴を棄却した原判決を破棄し第一審判決を取り消して訴えないし請求について裁判する場合が代表例であるが、その外に、第一審判決を取り消して第一審に差し戻す場合[3]も自判に含まれる(326条柱書にいう事件は、直接には原審事件であることに注意)。自判は、次の場合になされる。

1)確定した事実について憲法その他の法令の適用を誤ったことを理由として原判決を破棄する場合において、原審により裁判されるべき事件(通常は控訴事件)がその事実に基づき裁判をするのに熟するとき。例:
2)事件が裁判所の権限に属しないことを理由として判決を破棄するとき。

その他
いくつかの判例を挙げておこう。

3.8 特別上告(327条

最高裁判所は、違憲審査をする終審裁判所であるので(憲法81条)、高等裁判所が上告審としてした判決に対して、憲法違反を理由に最高裁に上訴することが認められている。これを特別上告という。特別上告には、確定遮断効はない(116条参照)。

特別上告についても、その性質に反しない限り、通常の上告及び上告審の訴訟手続に関する規定が準用される。最高裁判所は、原判決に憲法の違反がない場合でも、「判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反」を職権で調査して、原判決を破棄することができる(322条・325条2項の準用)。実例:

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2005年3月26日−2011年11月3日

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