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民事訴訟法講義 当事者2/2 関西大学法学部教授 栗田 隆 |
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| 民法 | 民事訴訟法 |
|---|---|
| 権利能力 | 当事者能力 |
| 行為能力 | 訴訟能力 |
当事者能力を有する者を列挙すると、次のようになる。
現実の社会では、種々の社団や財団が、法律の規定にしたがって法人格を取得することのないまま、経済取引その他の社会活動を営んでいる。このような組織体にも、次の理由により、当事者能力が認められている(29条)[CL1]。
29条の適用を受けるのは、次のような法人でない社団または財団である。
(a)代表者の定めのある社団 人の結合体であって、その団体の活動を基礎付けるものとして構成員から独立して管理される特別な財産をもち、現実の社会において代表者を通じて当事者としてその名で取引などの活動をなすことが事実上できるような団体を指す[21]。学会、同業会、校友会、同窓会、町内会、団地の自治会、未登記の労働組合、運動団体、法人組織になっていないゴルフクラブ、入会団体[36]などである[9]。代表者は、団体の構成員であるのが通例であり、その方が構成員の利益擁護の点で好ましいが、しかし、それに限定する必要はない(商254条2項参照)。団体の構成員の利益が代表者を通じて適切に擁護される関係があれば足りる。
次の点に注意が必要である。
(b)管理者の定めのある財団 寄付者の帰属を離れ、一定の目的のために結合された財産の集合体で、独立の管理機構に服しているものを言う[12]。設立中の財団法人や、財団の実質は備えているが主務官庁の許可を受けていない育英会や図書館などがこれにあたる[14]。
29条の適用がある場合には、その社団・財団が当事者となることができる(29条の「その名において」の「その」は、「代表者又は管理者」ではなく、条文の主語の「社団又は財団」を指す)[23]。また、団体の名前で提起された訴えと、構成員の全員の名で提起された訴えとを区別する必要がある。後者の場合には、構成員全員を訴訟の当事者欄に個別に記載することが必要である。その煩雑さに耐えない場合こそが、29条がその効用を発揮する場合である[CL2]。
一般に当事者能力の有無は職権調査事項であり、かつ、法人でない社団又は財団の当事者能力の有無は明瞭でない。そのような場合に、裁判所は、法人でない社団又は財団として訴え又は訴えられた当事者に対し、定款、寄附行為その他の当該当事者の当事者能力を判断するために必要な資料を提出させることができる(規則14条)。
| 最判昭和37年12月18日民集16巻12号2422頁・[百選*1998a]41事件 |
| B1,B2,B3 銀行 |組合設立(融資先のA会社の債権の取立と3銀行の債権の保全を目的として設立された) ↓ X委員会(法的には組合) ←−−−− A会社 | 債権譲渡 売掛代金支払請求 ↓ Y |
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法人でない社団が訴えにより権利を主張する場合について、当事者となった社団と訴訟物たる権利義務との関係を、権利義務の内容に従って見ておこう。
(a)不動産の所有権は、社団に帰属するのではなく、構成員に合有的にまたは総有的に帰属する。(α)法人でない社団が当事者となって、社団に所有権が帰属することの確認判決を求めることはできないが、構成員に帰属することの確認判決を求めることはできる。この場合に、社団がその構成員のために訴訟担当していることになる。構成員の氏名は、請求の趣旨等に具体的に列挙する必要はない(そうでなければ、構成員が多数の場合あるいは構成員が変動した場合に煩雑となり、29条の意義が損なわれる)。(β)不動産の登記能力(登記名義人となる一般的資格)を有するのは、法人格を有する者に限定されおり、法人でない社団は、登記請求権も有しないので[5]、社団の代表者が構成員全員の受託者たる地位において代表者個人の名義で所有権の登記をするか、または、構成員全員の共有名義の登記をすることになる。いずれの場合でも、社団が当事者(訴訟担当者)となることを認めてよい。この場合には、第三者(代表者または構成員全員)への給付を求める訴えとなるが、これも許される[22]。
(b)不動産の明渡請求権あるいは妨害排除請求権の主張についても(a)で述べたことが妥当する。しかし、これと並んで、構成員はこれらの請求権の行使を社団に担当させることができる。例えば、建物の明渡請求権については、「社団に引き渡せ」との判決を求めることも許される。[15]
(c)動産のうち、登記・登録制度が用意されているものについては、上記(a)(b)で述べたことが妥当する。しかし、その他の動産については、社団自体に権利が帰属すると考えてよい。その方が、権利関係が簡明になるからである。冒頭の設例において、ボート部が当事者となって、「ボートをボート部に引き渡せ」との判決を求めることは許される。
(d)債権も、社団自体に権利が帰属し、社団が当事者になると考えてよい。但し、債権の担保のために抵当権が設定されている場合には、登記簿上、抵当権者は社団の代表者となるので、この場合にも債権が社団に帰属すると考えてよいかが問題となる[16]。被担保債権は社団に帰属しつつ、抵当権設定の時点でその権利行使が代表者に委任されたと考え、紛争が生じれば代表者が当事者になると考えたい(任意的訴訟担当)。
胎児が相続や不法行為による損害賠償請求の問題に関して権利能力を有するかの問題は、国際私法の領域では、問題となる法律関係の準拠法により決定されるべきであるとする見解が有力である([折茂*1972a]2頁)。これに従えば、胎児の当事者能力は、民訴28条を介して、問題となる法律関係の準拠法が権利能力を認めているか否かにより決定される。
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第一審裁判所は、Xが未成年者であることに気付かないまま請求棄却判決をした。これに対してXが自ら控訴した。Xが未成年者であることに気付いた控訴審は、どうすべきか。 |
民訴法の定める特則として31条以下があり、重要な変更が加えられている。
行為能力との比較
行為能力は、「自ら単独で有効に法律行為をなすことができる一般的な資格」と定義されている。したがって、重要事項について保佐人・補助人の同意が必要な被保佐人・被補助人は、民法上は制限能力者の内に分類される(例えば、[内田*民法1v2a]102頁)。他方、訴訟能力の定義に、「単独で」を含めるかどうかについては、教科書の記述は分かれている[18]。しかし、被保佐人・被補助人は、訴訟無能力者ではなく、不完全ながらも訴訟能力を有する者のなかに分類し、不完全訴訟能力者(ないし制限訴訟能力者)と呼ぶのであるから、訴訟能力の概念の中に「単独で」を含めない方がすっきりした定義となろう。
「制限訴訟能力者」と「訴訟行為につき能力の制限を受けた者」(人訴13条2項)とは区別しなければならない。後者には訴訟無能力者も含まれる(同条1項で民訴31条の適用が排除されていることに注意)。これに対して、前者は、現在のところ通常は、訴訟無能力者を含まない意味で用いられている。この講義では、混乱を避けるために、不完全訴訟能力の語を用いるようにする。
「制限能力者」は、平成11年の民法改正前は「無能力者」と呼ばれていたが、言葉の侮蔑的な響きの強さのために現在のように改められた。その点からすれば、民訴28条で用いられている「訴訟無能力者」の語も、将来は、他の適当な語に置き換えられるのが望ましい(「不完全訴訟能力者」の語も同様である)。ただ、「訴訟無能力者」は現行法で用いられている語であり、この講義では現在の条文の用語法に従わざるをえない。
分類
訴訟能力の有無・程度により、自然人は次のように分類される。
| 分類 | 該当者 | 訴訟行為をなすための要件 | 違反の効果 | 人訴法上の位置付け | 参考:民法上の取扱い |
|---|---|---|---|---|---|
| 訴訟無能力者(31条) | 成年被後見人・ 未成年者 |
自らは有効な訴訟行為をなすことができない。法定代理人によって代理されることが必要。例外あり。 | 無効。但し、34条2項により追認可能 | 訴訟行為につき能力の制限を受けた者(人訴13条) | 制限能力者が能力の補充なしにした行為は、有効であるが、取り消すことができる(民法9条・5条2項・13条4項・17条4項) |
| 不完全訴訟能力者(32条) | 被保佐人・被補助人 | 自ら訴訟行為をなすことができるが、原則として保佐人・補助人の同意が必要(民法13条1項4号・17条1項)。 | |||
| 完全訴訟能力者 | 上記以外の者 | 単独でできる(但し、意思能力を欠く場合は別)。 |
但し、次のように未成年者が独立して法律行為をすることができる場合には、訴訟行為も独立して(自ら単独で)することができる(31条但書き)[17]。
他方、民法5条3項の財産処分の許可は、個別的なものであり、訴訟能力の基礎とは認められない。
任意後見監督人が選任されることにより任意後見契約が効力を生じた場合の本人の訴訟能力については、訴訟代理の項で説明する。
同意が必要な行為を同意なしにした場合には、その行為は無効であるが、追認があれば有効になる。
(a)被保佐人・被補助人および未成年者は、意思能力を有する限り、完全訴訟能力を有する(人訴13条1項)。但し、これらの者の判断力が不十分な場合があるので、その場合には裁判長は、第1次的には申立てにより、第2次的には職権で、弁護士を訴訟代理人に選任することができる(人訴13条2項・3項後段)。
(b)成年被後見人についても、意思能力を有する限り訴訟能力を有する。ただ、意思能力の判定が必ずしも容易でないこと、精神状態が変動することを考慮すると、手続の安定のために、成年後見人又は成年後見監督人が職務上の当事者となって訴訟を追行することができる(平成15年人訴14条)[34]。但し、意思能力がある限り自ら追行することもできるが、必要に応じて訴訟代理人を選任すべきである(人訴13条参照)
以下では、説明の便宜上、訴訟無能力者が自ら訴訟行為をした場合について述べる。
追認
訴訟能力等を欠くとの理由で無効な訴訟行為も、法定代理人あるいは能力を有するに至った本人が追認すれば、行為の時にさかのぼって有効となる(34条条2項)。追認は、これまでの訴訟行為全体について一括してなされなければならず、「いいとこ取り」は許されない。
補正・補正命令
過去の行為について適法な追認を得ると共に、将来に向かって有資格者が訴訟を追行するようにすることを、「能力の欠缺の補正」という。補正の余地がある場合には、裁判所は、期間を定めてその補正を命じなければならない(34条1項)。名宛人は、補正されるべき行為をした者である[24]。追認するか否かは、追認権を有する者が従前の訴訟追行の情況を見て判断すればよいことであり、追認する義務があるわけではない。追認が得られなければ、当該訴訟行為は無効となる。
無効の原則の例外
訴訟無能力者の訴訟行為も、無能力者保護の制度趣旨と民事訴訟法の手続の安定等を考慮のうえ、例外的に、有効とされることがある([中野*1994a]87頁以下)。例えば、訴訟無能力者が単独で訴えを提起し、請求棄却判決に対して彼が控訴した場合には、無能力者の保護のために、控訴の提起は有効として、訴え提起行為の補正を命ずるべきである[6]。
訴え提起の段階での無能力
当事者の一方が訴え提起の時点においてすでに訴訟能力を欠いていた場合の取扱いは、次のように場合分けされる。
(a)訴訟能力を欠く者が自ら訴えを提起した場合には、訴状審査の段階であるか、その後の段階であるかを問わず[7]、34条により補正が命じられる。補正されなければ、訴え提起行為が無効であることを理由に、訴えを却下する[25]。この場合の無効は、請求について判決(本案判決)する義務を裁判所に負わせることができないという意味で無効である。訴えが外形的に提起されている以上、裁判所はそれを無視することはできず、訴え提起行為が無効であることを却下判決により明確にしなければならない。訴えが却下された後で、法定代理人等があらためて訴えを提起することは、妨げられない[26]。なお35条は、文言上は無能力者の相手方が訴えを提起する場合のための規定であるが、訴訟無能力者が訴えを提起する場合にも類推適用され、彼の側で特別代理人の選任を申し立てることができる(通説)。
(b)訴訟無能力者を被告とする訴えで訴状に法定代理人が記載されていないものについては、さらに次のように場合分けされる([中野*1994a]=中野貞一郎『 民事訴訟法の論点1』(判例タイムズ社)84頁以下参照)。
| 最判昭和29.6.11民集8−6−1055 [百選*1998a]51事件 |
事実の概要Xが提起した訴えに精神能力12才程度のYが訴訟代理人を通じて応訴した。Y敗訴の一審判決に対して、Yが控訴を提起した。その後、Yは事実上の監護者であるDと喧嘩し、Xの訴訟代理人の勧めに従って控訴を取り下げた。その直後にYに準禁治産宣告(現:保佐開始の審判)がくだされ、Dの夫Eが保佐人に選任された。こうした事情をもとにYの訴訟代理人が控訴取下げの無効を主張した。控訴審は、控訴の取下げの無効を認めた。 これに対してXが、精神能力の欠如のゆえに控訴取下げが無効なら控訴提起も無効のはずであると主張して、上告。 |
判旨Xの精神能力は12、3才の児童に比せられる程度にすぎず、しかも、その控訴取下げは姉D夫婦や訴訟代理人に相談せずになされたこと、そのためYは、控訴取下げによって前記のごとき重大な訴訟上並びに事実上の結果を招来する事実を十分に理解することができず、控訴取下げの書面をもって、漠然Xに対する紛争の詫状程度に考え、本件控訴取下げをなしたものであると認められることから、Yのなした控訴取下げは意思無能力者のなした訴訟行為にあたり、その効力を生じないものと解すべきである。これに反して、控訴の提起自体は、単に一審判決に対する不服の申立てにあたるにすぎず、かつ敗訴判決による不利益を除去するための自己に利益な行為である関係上、Yにおいてもその趣旨を容易に理解し得たものと認められるから、本件控訴の提起を有効な行為と解することは妨げられない[8]。 |
離婚訴訟の場合 精神病にかかった配偶者に対する離婚の訴えについては、35条の類推適用は認められない。35条の特別代理人はその訴訟限りの臨時の法定代理人たる性質を有するものであって、離婚訴訟のように人の一生に生涯を通じて重大な影響を及ぼすべき身分訴訟については、同条の適用はない。精神上の障害により事理弁識能力を欠く常況にあって未だ成年後見開始の審判を受けない者に対して離婚訴訟を提起しようとする夫婦の一方は、まず他方に対する成年後見開始の審判を得て人訴14条により成年被後見人の後見監督人または成年後見人を被告として訴えを提起すべきである(最判昭和33.7.25民集12-12-1823・[百選*1998a]52事件)。
1998年6月21日−2005年5月14日