目次文献略語

民事訴訟法講義

訴訟上の代理 2


関西大学法学部教授
栗田 隆

4 訴訟代理人


4.1 本人訴訟主義と弁護士代理の原則

本人訴訟主義
「弁護士資格を有しない当事者は、弁護士を訴訟代理人に選任しなければならない」との建前を弁護士強制主義という。この建前を採用している国もあるが、日本は採用していない。当事者が自ら訴訟行為をなすことが認められており、弁護士を訴訟代理人に選任するか否かは、当事者の自由である。これを本人訴訟主義という。

弁護士代理の原則(54条1項
しかし、当事者が訴訟代理人を選任する場合には、他の法令に基づく場合を除き、厳格な国家試験を経て専門的知識を有することを認められた弁護士を選任しなければならない(54条1項本文)。弁護士のみが訴訟代理人になりうるとの原則を、弁護士代理の原則という。ただし、簡易裁判所においては、係争利益が小さく、弁護士代理の原則を貫くと費用倒れになる場合があるので、裁判所の許可を得て、弁護士でない者を訴訟代理人にすることができる(54条1項但書)。

弁護士代理の原則から有資格者代理の原則へ
弁護士代理の原則は、訴訟による紛争解決の需要が高まり、事件の特性にあわせて訴訟代理人の資格を広げるべきであるとの声が高まると共に、変容を受けつつある。その変容は、以前から、特許庁の審決に対する訴え等については弁理士も訴訟代理権を有するという形で始まっていたが(弁理士法6条)、近年の司法改革の流れの中で、さらに進行している。[R66]
このように、弁護士以外の者にも訴訟代理人となる資格が認められるようになってきており、かつ、訴訟代理人となることができるのはこれらの有資格者に限られるとの原則が維持されている。この講義では、これを有資格者代理の原則と呼ぶことしよう。

例外的弁護士強制−債権回収会社
権利が義務者の任意の履行によって平穏に実現されない場合に、私人が実力を用いて権利を実現することは許されず(自力救済の禁止)、権利者は国家に強制的な実現を求めなければならない。ところが、日本では、裁判手続による権利の実現に時間と費用がかかることを口実に、暴力団員等が権利の実現に介入し、おぞましい結果をもたらしてきた(民事介入暴力[R72]である)。そこで弁護士法は、弁護士以外の者が報酬を得る目的で法律事件について法律事務を扱うこと、及び、他人の権利を譲り受けて訴訟等の手段により権利を実行することを業務として行うことを禁じた(同法72条・73条)[9]。しかし、社会の変化は、債権回収業務のコストダウンを求め、それを効率的に行う企業を必要とするようになった。ところが、これまでの弁護士システムでは、その要求に適切にこたえることができない。そこで平成10年に、債権管理回収業に関する特別措置法が制定され、法務大臣の許可を受けた株式会社(債権回収会社)が、他人の一定範囲の金銭債権について、債権者から委託を受けて債権の管理若しくは回収の業務を行い、又は債権を譲り受けてその管理若しくは回収の業務を行うことが認められるようになった[R47][10]。債権回収会社は、債権者から委託を受けて債権の取立てを行うにすぎない場合でも、自らが当事者となって訴訟を行うことができる(債権回収業法11条1項。訴訟担当である)。そのような債権回収会社については、弁護士強制主義がとられている。すなわち、簡易裁判所以外の裁判所で裁判される事件、および、簡易裁判所で裁判される事件であっても訴額が簡易裁判所の事物管轄の上限額(裁判所法 第33条1項1号 )を超える事件については、会社の代表者が自ら訴訟行為をする場合でも、支配人がする場合でも、弁護士資格を有することが必要であり、これらの者が弁護士資格を有しない場合には、弁護士を代理人にしなければならない(同法11条2項。[山田*1998a]9頁)。

4.2 訴訟代理人の意義

訴訟追行のための包括的代理権を有する任意代理人を訴訟代理人という(任意的訴訟担当は訴訟代理と機能的に類似しているが、訴訟担当者は当事者になる点で訴訟代理人から区別される[16])。訴訟代理人は、代理権の範囲を規律する規定を基準にして次のように分類することができる。
代理資格の根拠法の点からも整理しておこう。
ここで、法定代理人と訴訟代理人の主要な異同点を整理しておこう。
同じ点
問題となる事項 法定代理人 訴訟代理人
代理権の書面による証明の必要 規則15条 規則23条1項
代理権欠如の場合の補正命令 34条1項 同左(59条
無権代理人の行為の追認 34条2項
代理権消滅の相手方への通知 36条1項
代理権消滅の裁判所への書面による届出 規則17条 規則23条3項
代理権欠如は、絶対的上告理由・再審事由である 312条2項4号・338条1項3号 同左
異なる点
問題となる事項 法定代理人 訴訟代理人
本人の意思に基づいて選任されるか NO YES
当事者の地位との接近性 近い。例えば、当事者尋問の規定が準用され(211条)、証人や鑑定人にはなれない。 遠い。例えば、尋問する場合には、証人尋問の方法による。理論上は、212条2項の鑑定人欠格事由に該当しない限り、鑑定人にもなりうる(ただし、214条により忌避される可能性が高い)。
代理権の範囲 極めて広範。

ただし、利益相反行為は禁止され、共同代理に服する場合がある。また、後見監督人がいる後見人ならびに特別代理人は、32条2項の行為をなすについて、特別の授権を必要とする。
55条2項の事項については特別の委任が必要であるが、広範である(55条1項)。弁護士である訴訟代理人については代理権の範囲を制限することができない(55条3項)。

なお、訴訟委任による代理人と法令による代理人とで代理権の範囲に差があり(55条4項)、55条2項は法令による代理人には適用されない。
法定代理人の特別授権事項の範囲よりも訴訟代理人の特別委任事項の方が広範囲であることにも注意。
送達 法定代理人にしなければならない(102条1項) 訴訟代理人にするのが通常であるが、当事者本人にすることも許される。
代理人が複数いる場合 代理権の根拠法に従う。婚姻中の父母の共同親権につき民818条3項、後見人につき民842条・843条・859条の2参照。法人の代表者については、個別代表が原則であるが、共同で代表すべきことを定めることもできる(会社法349条2項)。

ただし、共同代理の場合でも、送達は1人にすればよい(102条2項)。
個別代理(56条
当事者の更正権 なし あり(57条

以下では、訴訟委任による訴訟代理人と法令による訴訟代理人の間の相違点に重点を置いて説明する。

5 訴訟委任による訴訟代理


5.1 代理人の資格(54条

弁護士代理の原則  訴訟代理人の資格を有するのは、次の理由により、弁護士に限られている(54条1項)。
例外  簡易裁判所においては、弁護士以外の者も裁判所の許可を得て訴訟代理人になることができる(54条1項ただし書)。54条1項のいずれにも該当しないが、前述のように、弁理士・司法書士は、それぞれ一定範囲の訴訟につき、訴訟代理人になることができる。

弁護士法73条・信託法10条
争いのある権利を弁護士資格を有しない者が譲り受けて、自ら訴訟を追行することを広く許容すると、弁護士代理の原則が潜脱されてしまう。さらに、訴訟提起前の段階で、暴力団員が他人間の紛争に介入して不正な利益を得ることを防止する必要もある(残念ながら、債務者が義務を履行しない場合に、暴力団員に取立てを頼もうとする者は未だにいる)。こうした配慮から、弁護士法73条が譲り受けた権利の実行を業とすることを禁止し、信託法10条が訴訟行為をさせることを主たる目的とする信託(訴訟信託)を禁止している。

しかし、社会の分業化は進んでいる。今までに一度も訴訟当事者となったことのない者が、自己の債権を換価する方法として、(α)権利が実現できるか否かわからないまま弁護士報酬だけは支払わなければならないというリスクを負って、訴訟により権利の実現を図るという方法と、(β)それを市場で換価するという方法とがあるときに、どちらが彼にとって利用しやすい方法かと言えば、後者であろう。(β)の方法が有効であるためには(市場でできるだ高く換価できるためには)、それを買い取る者が多数存在することが必要であり、かつ債権を買い取った者が債権回収のために訴訟と強制執行を追行することを許容することも必要である。

これら二つの要請(他人間の紛争に介入して不正な利益を貪る者の出現の阻止の要請と社会的な分業化の要請)の調整は難しい問題であるが、ただ、「弁護士法73条を厳格に一律に適用すべきである」と主張すればすむ時代が去ったことは確かであろう。

時代の変化にあわせて、最高裁は次のような判断を示した。「弁護士法73条の趣旨は,主として弁護士でない者が,権利の譲渡を受けることによって,みだりに訴訟を誘発したり,紛議を助長したりするほか,同法72条本文の禁止を潜脱する行為をして,国民の法律生活上の利益に対する弊害が生ずることを防止するところにあるものと解される。このような立法趣旨に照らすと,形式的には,他人の権利を譲り受けて訴訟等の手段によってその権利の実行をすることを業とする行為であっても,上記の弊害が生ずるおそれがなく,社会的経済的に正当な業務の範囲内にあると認められる場合には,同法73条に違反するものではないと解するのが相当である」(最高裁判所 平成14年1月22日 第3小法廷 判決(平成12年(受)第828号))この理は、信託法10条にも妥当する。

5.2 訴訟代理権の範囲(55条−57条)

委任事項(55条
一般的委任事項
  訴訟代理権の範囲は、代理人が原則として弁護士であることを考慮して、手続の円滑な進行のために、包括的に法定されている(55条1項)。訴訟代理権には、次のものが含まれる。
  1. 判決手続、強制執行、保全手続の追行。判決手続の追行のなかには、反訴に対する応訴・訴訟参加も含まれるが、2項の特別委任事項は除かれる。2項により、上訴の提起が特別委任事項とされているので、代理権は審級ごとに付与することができる(審級代理の原則)
  2. 55条1項には明示されていないが、攻撃防御方法の提出の前提として必要な実体法上の権利行使(契約の解除、相殺、取消し、建物買取請求など)をなし、あるいは相手方の意思表示を受領する権限も有する。
  3. 弁済の受領。これも2と同様の私法行為であるが、訴訟手続の追行に必要不可欠というわけではないので、特に明示されている。

特別委任事項  次の重要行為については、本人の意思を尊重するために特別の委任が必要である(55条2項)。
  1. 反訴の提起(146条
  2. 訴えの取下げ(261条以下)、訴訟上の和解の締結(264条以下)、請求の放棄・認諾(266条)、訴訟脱退(48条
  3. 控訴・上告の提起、上告受理の申立て、またはこれらの取り下げ
  4. 手形・小切手訴訟および少額訴訟における判決に対する異議の取り下げ、またはこれらの取下げの同意
  5. 復代理人の選任

もっとも、実際には訴訟委任の定型用紙に特別委任事項も記載されているので、弁護士たる訴訟代理人は当初からこれらについても授権を得ているのが通常である。

代理権の制限禁止  弁護士である訴訟代理人の代理権限を制限することはできない(55条3項)。代理権の範囲を定型化して、その調査の負担を軽減し、手続を円滑に進めるためである。

反訴について  55条では、反訴の語が2度出てくる。
個別代理の原則56条
当事者の更正権57条)   事実関係については代理人より当事者の方がよく知っていると考えられ、また本人の意思を尊重すべきであるので、訴訟代理人の事実に関する陳述を更正する権利が当事者に認められている。ただし、手続の円滑な進行のために、代理人の陳述に続いて直ちに取り消しまたは更正することが必要である。代理人の陳述を知ったのちに直ちにという意味ではないから、更正をすることができるのは、当事者が代理人と共に出廷している場合に限られる([伊藤*民訴]116頁注101)。

和解締結権限  55条3項は2項の特別委任事項にも適用されるから[2]、弁護士に和解権限が与えられた場合には、本人が代理人の和解権限を制限しても、相手方との関係では無効である(高松高判 昭和35年1月26日・高民集13巻1号24頁(後掲最判昭和38.2.21の原審))[11]。もっとも、弁護士が特別委任をうけて和解を行う場合でも、裁判所は本人の最終的意思を確認することが望ましい。そのような確認なしに、代理人によって本人の意思に反した和解が締結されると、トラブルが生ずるからである。訴訟上の和解は、訴訟物を中心としながらも、これと並列的に、または訴訟物についての争いを解決するための譲歩として訴訟物以外の多様な権利関係を取り込むこともできる(最判昭和38.2.21民集17-1-182頁[3])。
最判昭和38.2.21民集17-1-182頁 [百選*1998a]56事件
事実の概要
  Y−−貸金返還請求訴訟−→X
               ‖
               A(訴訟代理人・弁護士)

XはAに和解権限も授与していたが、裁判所側の発言から推察される和解案に不満であるため、Aに和解に応じられないことを明言して帰宅した。しかし、Aが、31万円の債務の承認・3回の分割弁済・支払の担保のための抵当権設定を内容とする和解に応じた。そこで、Xが次の訴えを提起した。

X−−和解無効確認の訴え−→Y

原審(高松高判昭35.1.26高民集13-1-24頁)は、現55条3項・2項に相当する規定を適用して、和解権限の対外的制限を認めず、また、和解権限の全面的撤回をYに通知した事実も認められないから、Aは和解権限を有するとした(59条36条1項)。

最高裁では、Aは訴訟物外の権利関係たる抵当権設定を内容とする和解を締結することができるか否かが特に問題となった。
判旨  本件の抵当権設定は訴訟物に関する互譲の一方法としてなされたものであり、Aに授与された和解の代理権限のなかに包含されていると解することができる。

5.3 代理権の不消滅(58条

当事者の死亡等(58条1項)
例えば訴訟手続中に当事者が死亡した場合には、相続人が当然に訴訟を承継し、新当事者となるが、現実に訴訟手続を追行できるようになるまで手続は中断される(124条1項1号)。しかし、訴訟代理人がいる場合には、有資格者代理の原則が採用されていること、簡裁で非弁護士が代理人となるには裁判所の許可が必要であることを考慮すると、従前の訴訟代理人が新当事者のために引き続き訴訟代理人になるものとし、訴訟手続を続行させることが望まれる。そこで、訴訟手続を円滑に進めるために、訴訟代理権は次に掲げる事由によっては消滅しないものとされた(58条1項。これと類似の規定として、不動産登記法17条がある)[12]。
選定当事者(58条3項)
同様な理由により、選定当事者が死亡その他の事由により資格を喪失した場合にも、選定当事者によって選任された訴訟代理権は消滅しない(58条3項)。この理は、権利帰属主体の意思に基づく訴訟担当の場合一般に類推適用される。

資格に基づく訴訟担当(58条2項)
一定の資格に基づく訴訟担当者(資格担当者)が資格を喪失した場合には、新たに同一資格を有することになる者が訴訟を承継し、新当事者となる(124条1項5号)。この場合にも、新旧当事者の間に利害の対立はないから、旧当事者の訴訟代理人は新当事者の訴訟代理人となる(58条2項)[6]。これに該当するものとして、例えば次のものがある。
なお、2項は、新たに同一資格を有することになる者が存在する場合についての規定である。これと、そのような者が存在しなくなる場合とは区別しなければならない。後者の場合には、異なる考慮の下に異なる取扱いがなされる。例えば、破産手続開始決定が取り消される場合には、訴訟手続は破産者であった者が受継することになるが、破産者破産管財人との間に利害の共通性が欠如していることを考慮して、破産管財人が選任した訴訟代理人の代理権は消滅し、訴訟手続はひとまず中断する。

訴訟手続の不中断124条2項)
これらの規定により代理権が消滅しない場合には、訴訟手続の中断も生じない(124条2項。58条と124条1項との対応関係に注意[1])。当事者が交代している場合には、旧当事者の訴訟代理人は当然に新当事者のための代理人となる。
検討  債権者代位訴訟(民423条)における原告が代位の基礎となる債権を失えば、彼は当事者適格を失う。この場合に、彼が選任した訴訟代理人の代理権はどうなるか。

 ()債務者が代位債権者に弁済をしたことにより代位の基礎となる債権が消滅した場合についてはどうか。
  • 固有適格説をとれば、固有適格の消滅後に訴訟を承継すべき者はおらず、訴訟は終了し、58条2項の適用の余地はない[7]。
  • 訴訟担当説をとった場合には、生成中の既判力を被担当者に及ぼすために被担当者が訴訟を承継すべきである。問題は、訴訟手続の中断・受継の方法によるべきか、それとも債権譲渡の場合と同様に、参加承継・引受承継の方法により承継させるべきかである。破産管財人が破産財団に属する財産について当事者となって訴訟をしていた場合と類比させると、中断・受継の方法によるとしても、52条2項の適用はないとすべきであろう。ただ、債務者が代位債権者に弁済をしたのかどうかについて争いが生じやすいことを考慮すると、この場合は、3当事者型訴訟として処理しないと、混乱が生ずるように思われるので、参加承継・引受承継の方法によるべきであろう。

 ()代位の基礎となる債権が他に譲渡された場合についてはどうか。
  • 訴訟担当説を前提にした場合でも、次の2つの考えがありえよう。(α)124条1項5号に掲げる場合に該当すると考えれば、52条2項の適用も肯定することになる。訴訟担当説に従えば、そのように考えてもよいようにも見える。また、実際上も、旧代位債権者が訴訟代理人に選任した者を新代位債権者がそのまま訴訟代理人に選任することは多いであろう。しかし、(β)これは124条1項5号の問題と言うよりも、通常の債権譲渡の場合と同様に、参加承継・引受承継により処理すべきであり、したがって52条2項の適用はないと考えることもできよう。いずれがよいか迷う。
  • 固有適格説では、固有適格の移転の問題となり、債権譲渡の場合と同様に、参加承継・引受承継により処理されるべき問題であり、52条2項の適用は否定されよう。

債権取立訴訟における差押債権者(民執155条)についても、同様な問題が生ずる。

5.4 訴訟代理権の消滅

訴訟代理権は、前記の場合を除き、民法の規定により消滅する。次の場合がこれに該当する。
相手方が代理権の消滅を知らずに代理人と訴訟行為をして、それが無効であるというのでは手続が不安定になり、相手方の利益が害されるので、代理権の消滅は、相手方に通知しなければ効力を生じない(59条36条1項)。代理権の消滅は善意の第三者に対抗できないとするにとどまっている民法112条と比較すると、相手方の善意・悪意に関して争いが生ずる可能性を予め排除して、手続の安定を図っている点が重要である。

5.5 訴訟代理人の地位

訴訟追行上あることについての知・不知、故意・過失が問題となる場合には、代理人が基準になる(民法101条1項参照)。当事者本人が知っていることを代理人に伝えなかったため、代理人が知らなかった場合には、当事者は代理人の不知あるいは故意・過失のないことを自己の利益に主張することはできない(民101条2項参照)。

訴訟代理人が選任されている場合でも、当事者本人も訴訟行為をなすことができる。期日の呼出状や裁判書を本人に送達することも適法である(最判昭和25.6.23民集4-6-240・[百選*1998a]57事件)。しかし、訴訟代理権の包括性を考慮すると、これらは代理人になすのが妥当である。

5.6 弁護士法違反の代理行為の効力

弁護士法25条
弁護士法25条は、弁護士の職務執行の公正を維持するために、次の事由が存在する場合に、職務の執行を禁止している(さらに、弁護士法30条の17が、弁護士法人の職務制限を定めているが、省略する)。
これらの規定に違反して弁護士が訴訟行為をなそうとする場合には、明文の規定はないが、裁判所は、相手方当事者からの申立てによりまたは職権で、その弁護士の訴訟関与を将来に向かって排除すべきである。排除の裁判は、不服申立ての機会を与えるために、決定の形式でなすのが適当である(関与禁止決定)。

弁護士が弁護士法25条1号・2号に違反してなした過去の訴訟行為を訴訟法上どのように評価するかについては、見解が分かれているが[5]、相手方の異議がなければ有効となり、異議は、90条に準じて、違反事実を知りまたは知りうべき時から遅滞なく述べなければならず、遅滞の場合には異議権を喪失するとする見解(異議説)が現在では通説・判例となっている(1号違反が上告審において初めて主張された事件につき、最判昭和38.10.30民集17-9-1266、[百選*1998a]119頁[伊藤])。弁護士法のこれらの規定により保護されるべき者は、最初に弁護士に協議をした者だからである。3号・4号・5号違反の場合にも、異議説が妥当である。

弁護士法57条2号
弁護士法57条2号により業務を停止された弁護士は、訴訟手続への関与を禁止される。しかし、裁判所が業務停止処分に気付かなかったため、当該弁護士が訴訟代理人としてした訴訟行為の効力については、見解が分かれている。最判昭和42.9.27民集21-7-1955は、業務停止の事実が公にされていないような事情のもとにおいては、訴訟手続の安定を優先させてよく、その行為は無効とならないとした。しかし、これに反対の見解も有力である([百選*1998a]121頁(佐々木))。

弁護士法72条
弁護士法72条違反の場合については、絶対無効説が有力である。しかし、相手方がこれまでの訴訟追行を承認するときには、依頼者は信義則上無効を主張しえない場合もあると考えてよいであろう。

6 法令による訴訟代理人


6.1 法令による訴訟代理人の類型

法令による訴訟代理人は、代理権の範囲について55条1項-3項の直接の適用を受けない代理人である。次の2つに分類することができる。
  1. 実体法により、本人を広範に代理する特別な地位に就くことに伴い、その職務を十分に追行するために訴訟上の代理権も認められている者
    • 支配人(商法38条1項)
    • 船舶管理人(商法700条1項)
    • 船長(商法713条1項・811条1項)
    • 在外者の特許管理人(特許8条2項)
  2. 本人のために訴訟を専門的に追行する地位を認められた者
    • 国等の指定代理人(法務大臣権限法2条等・8条)

法令による訴訟代理人のうち、支配人等は、裁判外で広範な代理権を有していることを前提にして、裁判上の代理権を認められている。裁判外での代理権が内部的に狭い範囲に制限されている場合、あるいは現実に代理行為を行っていない場合に、裁判上の代理権を肯定することができるかは、弁護士代理の原則との関係で、見解が分かれる。この場合には、たとえ支配人として登記されていても、商法37条の意味での支配人にはあたらず、裁判上の代理権は認められないとするのが多数説である(仙台高判昭和59年1月20日下民集35巻1=4号7頁・[百選*1998a]55事件)。ただし、企業が紛争処理コスト・権利実現コストの削減を求めており、この社会的要求に応えるために解釈が変更される素地があることは否定できない(法律業務の弁護士独占を定める弁護士法72条と関連する問題である)

国等の指定代理人は、特定の事件について指定される代理人であるという点では、訴訟委任による代理人に近いが、それでも、代理権の範囲は、法務大臣権限法8条で定められており、56条1項−3項の直接の規制を受けるわけではないので、法令による訴訟代理人の一つに位置づけられている[15]。

次の者については、法令による訴訟代理人になることを認める明文の規定があるわけではないが、訴訟代理人になることを肯定する見解がある。

6.2 代理人の地位

訴訟委任による代理人の地位と基本的に同じである。ただし、その代理権の範囲は、代理の根拠法により定まり、55条2項(特別委任事項)の適用はない。例:

ただし、各根拠法で定められた代理権範囲を制限することについては、55条3項本文が類推適用される。訴訟手続の円滑な進行のために、代理権の範囲を定型化しておくことが必要だからである。本人と代理人との間の代理権の範囲に関する合意は、代理人の本人に対する責任問題に留まる。代理権の制限を有効とする商法38条3項は、裁判上の代理行為には適用されない([注釈*1992a]375頁[中島])。在外者の特許管理人についても同様に解すべきである(特許8条2号但書参照)。

6.3 代理権の消滅・不消滅

法令による訴訟代理人に訴訟代理権不消滅に関する規定(58条)が適用されるかについては争いがあるが、支配人の選任等、商行為の委任による代理権は本人の死亡によって消滅しない(商法506条)とされていることを考慮すると、適用を肯定してよい。在外者の特許管理人についても同様である。

7 補佐人


意義  当事者・補助参加人またはこれらの者の代理人が十分な弁論をなすことができるように、当事者等と共に出廷して、これらを補助するために口頭弁論において発言する者を補佐人という。訴訟代理人にも補佐人を認めたのは、特殊な専門家・技術者等によって事実関係を説明することが必要な事件もあるからである。

資格  弁護士である必要はない。訴訟能力者である必要もない。しかし、裁判所の許可が必要である(60条1項)。裁判所は、許可をいつでも取り消すことができる(同1項)。弁理士については、特許等の工業所有権関係の事項について出廷して陳述する資格が弁理士法(平成12年法49)5条により認められていて、尋問の権限も明規されている。

地位  当事者または訴訟代理人の知識を補充するために、自己の意思に基づいて陳述する一種の代理人である(通説[4])。補佐人の陳述は、当事者又は訴訟代理人が直ちに取り消し、又は更正しないときは、当事者又は訴訟代理人が自らしたものとみなされる(60条3項)[14]。しかし、次の点で通常の代理人と異なる。

目次文献略語
1998年7月20日−2013年4月30日