目次文献略語

民事訴訟法講義

送 達


関西大学法学部教授
栗田 隆

1 総 説


1.1 意 義

意 義
訴状を始めとする訴訟手続上の重要な書類は、当事者等に確実に渡されなければならない。そのために、送達という特別の伝達制度が設けられている。送達は、特定の者に訴訟上の書類の内容を知る機会を与えるために、特定の者に特別の方式で書類を交付し、または交付を受ける機会を与える行為である。直接交付することが原則であるが(101条)、これに限られない。訴訟手続は、重要な書類が当事者に送達され、当事者の手続上の権利が保障されたことを前提にして進行する。当事者は、送達された書類を受け取らなければならない(送達は命令的行為である)。送達に際しては、伝達の確実を期し、後日の紛争を予防するために、送達報告書が作成される(109条。送達は公証的行為である)。

職権送達の原則
送達は、当事者を介在させることなく、裁判所から送達を受けるべき者に対して直接に行われる。また、職権で行われるのが原則である(98条1項)。例外となるのは公示送達であり、これは当事者からの申立てに基づいてするのが原則である(110条1項。同条2項・3項に注意)。

書類送付
比較的重要でない書類は、送付という方法で伝達される。送付は、送達のような厳格な方式に服しない。ファクシミリを利用して送信する方法によることもできる(規則47条1項)。次の2つの類型に分けることができる。
  1. 一方の当事者から他方の当事者への直接の書類送付。これは直送とよばれる(規則47条1項)。当事者が直送しなければならない書類については、相当の理由がある場合にかぎり、裁判所を介して書類の送付がなされる(規則47条4項)。準備書面も直送されるのが原則であるが、直送が困難である場合には、送達もできる(規則47条4項カッコ書)。準備書面については、相手方が受領したことまたは送達の証明が必要だからである(法161条3項・規則83条2項)。
  2. 裁判所から当事者への書類送付。規則47条2項・3項参照。
用語法
「直送」という名詞の定義は、民訴規則47条1項かった書で与えられている。これをサ行変格活用動詞として用いることは、日本語として不自然ではない。しかし、民訴規則では、「直送する」とは言わずに、「直送をする」という表現を用いている(47条3項など)。

そのことを認識しつつ、言葉の趣味の問題して、この講義では、「直送をする」の簡略表現として「直送する」という表現も用いることにする。


裁判所への書類の提出
当事者から裁判所への書類の提出は送付の範疇に入らないが、訴状や訴え取下書など規則3条1項所定の書類[11]を除き、ファクシミリを利用して送信することにより提出することができる。書類提出作業の迅速化・負担軽減の点で有益である。ファクシミリを利用して書面が提出されたときは、裁判所が受信した時に、当該書面が裁判所に提出されたものとみなされる。受信結果が不鮮明なときなど、必要があると認めるときは、裁判所は送信に使用した書面を提出させることができる(規3条2項・3項)。

1.2 送達すべき書類

どのような書類を送達すべきかは、法令で個別に定められている(138条1項・146条2項・143条3項・145条255条1項など参照)[1]。送達は書類の内容を知らせることに目的があるので、原本を送る必要はなく、特別の定めがある場合を除き、書類の謄本または副本が送られる(規40条)。例:([書記官研修所*2002a]88頁が詳しい)
用語法
原本と写し
作成者の意思に基づいて直接作成され、写しの元になる文書を原本といい、原本を複製した文書を写しという。
謄本と抄本
原本全体の写しを謄本といい、一部の写しを抄本という。
謄本と写し
謄本は、公証機関により原本全体が正しく写されたものを指し、通常、正写した旨の認証文言が付されていることが要求される(認証謄本)。写しは、公証機関によって作成されたのではない複製文書を指す。民事訴訟では、私人が作成する複製文書は、認証文言の有無に係わらず、写しと呼ばれる。
正本と謄本
正本も謄本の一種であるが、原本に代えてそれと同一の効力をもたせるために公証機関が「正本である」旨の表示を付して作成した文書である[10]。訴訟記録に含まれる文書については、裁判所書記官が正本あるいは謄本であることを記載して、記名押印する(規33条)。
正本と副本
いずれも原本と同等の効力が認められるべきものとして作成された文書であるが、「正本」は、裁判所等の公的機関により作成された文書に用い、「副本」は、当事者またはこれに準ずる立場にある者が作成した文書に用いる。例:判決の正本、訴状の副本。

1.3 送達を受けるべき者

送達名宛人  送達を受けるべき者を、簡略に表現して、受送達者または送達名宛人という。当事者に対する送達は、次の者(送達名宛人)にすることができる。
送達受領者  送達された書類を受領することができるのは、まず、送達名宛人である。送達名宛人が送達場所にいない場合には、同居者等の補充送達受領資格者も受領することができる(106条)。

1.4 送達担当機関

送達事務取扱者
送達に関する事務は、裁判所書記官が取り扱う(98条2項)。この事務の中には、次のことが含まれる。
送達実施機関
送達を行い(送達名宛人が書類を受領することができるようにし)、送達報告書を作成する機関を送達実施機関という。次の者がこれに該当する。

)郵便業務従事者または執行官(99条)。これらの者は、送達されるべき書類を名宛人に実際に届ける。執行官による送達は、実務上、裁判所の近隣への送達、夜間・休日の送達をする必要がある場合に限られている(なお、証拠保全手続では、相手方への送達(証拠保全決定の告知としてなされる送達及び期日への呼出状の送達)は、証拠調べの少し前になされるのが通常であり、証拠調べを行う裁判官との連携が必要であるので、執行官が行うことが多い)。信書便事業者は107条の送達にのみ関係し、送達実施機関に含まれない。郵便業務従事者は、送達書類を特別送達の取扱いのなされる郵便物として送達し(郵便法49条[R76])、送達をした者は、送達報告書を作成する(109条)[13]。この送達は、「郵便による送達」と呼ばれる(107条の「(書留)郵便に付する送達」と区別しなければならない)。「特別送達の業務に従事する者」は、日本郵便株式会社の従業員であるが、郵便法74条により、「法令により公務に従事する職員」とみなされる(送達業務を妨害する行為から刑法的に保護される点が重要である)。

)次の場合には、裁判所書記官が送達実施機関となる。

1.5 送達場所

送達は、送達場所の届出がない限り(104条2項参照)、次の場所でなすのが原則である。
  1. 送達名宛人の住所等(住所、居所、営業所または事務所)(103条1項本文)。訴訟無能力者の法定代理人又は法人の代表者に対する送達は、本人又は法人の営業所または事務所においてもすることができる(103条1項ただし書・37条)。法人の代表者に対する送達場所は、むしろこれが原則となる。営業所・事務所は、主たるものに限定されない(特に必要がなければ、主たる営業所・事務所の方が好ましい。ただ、証拠保全が主でない営業所から離れた地で行われる場合等には、代表者に対する送達(証拠保全決定の告知としてなされる送達や証拠保全実施期日への呼出状の送達)は、証拠保全実施地の最寄りの営業所を送達場所とすることが多い)。その事務所・営業所が不明であれば、代表者の住所・居所においてなす(103条1項本文)。
  2. 送達名宛人の就業場所(103条2項)。就業場所は、受送達者が現実に業務についている場所をいう(最高裁判所 昭和60年9月17日 第3小法廷 判決)。就業場所での送達は、住所等に対する送達が困難である場合に認められる[14]。住所等での送達が困難であるか否かにかかわらず、次の場合にも就業場所での送達が認められる。
    • 当事者又はその法定代理人・訴訟代理人が送達名宛人であるときに、その者がその就業場所を送達場所として届け出た場合(104条1項)[3]。
    • 上記以外の者が送達名宛人であるときに、その者がその就業場所において送達を受ける旨を申述した場合(103条2項2文)。

ただし、送達事務の簡便化・実効性確保のために、次の場所での送達も許されている。
送達名宛人が郵便局内(現在では、郵便事業株式会社の営業所内)に私書箱を有する場合でも、民訴法の規定に従い送達されるべきであり、私書箱に投函することは許されない(債権差押命令の送達につき、私書箱への投函により送達が遅れたことにより差押債権者が損害を被った場合には、国は損害賠償義務を負う。最高裁判所 平成14年9月11日 大法廷 判決(平成11年(オ)第1767号))。

送達場所の固定
送達を円滑に行うために、送達場所を1つに固定することが次のように図られている。
 ()送達場所の届出  当事者又はその法定代理人・訴訟代理人は、送達を受けるべき場所として日本国内の適当な場所を届け出ることが義務づけられている(104条1項)。届出は、書面によりしなければならず、できるだけ訴状または答弁書に「送達場所の届出」の項目を設けて、そこに必要な記載をする方法ですべきである(規41条1項・2項)。届出のあった後は、送達はその場所においてする(104条2項)。届出に際して、送達受取人を届け出ることができる。例えば、親族の住所を送達場所として、その親族を送達受取人として届け出ることができる。届け出られた場所で交付送達・補充送達・差置送達のいずれもできなければ、書留郵便等に付する送達となる(107条1項2号・2項)。

 ()最初に送達がなされた場所への送達  送達場所の届出をしない者に対しては、前回の送達(遡れば最初の送達)が下記のいずれかに該当する場合には、その後の送達は、送達場所の届出がない限り、そこに示す場所においてする(104条3項)。

1.6 送達が有効になされていないことの効果

なされた送達に瑕疵があるために有効でない場合の処理は、(α)送達書類が何であるか、及び(β)瑕疵が判明したのがいつかに依存する。

訴状及び第一回口頭弁論期日の呼出状は、非常に重要なものであり、その送達が有効になされていないことが、

2 送達方法


2.1 通常の送達方法

交付送達の原則
送達は、法で認められた送達場所において、送達名宛人に書類を交付してなすのが、原則である(101条)。103条・104条により定まる送達場所において交付するのが通常であるが、次の場所で交付することもできる。
郵便による送達が行われる場合に、送達すべき場所に送達受領資格者がいなければ、配達職員は、郵便物を郵便事業株式会社の営業所で保管する旨のメモを残して、郵便物を営業所に持ち帰る。保管期間内に送達名宛人が郵便物を取りにくれば、出会送達(105条)になり、同居者等の補充送達受領資格者が取りにくれば、補充送達となる(106条1項後段)。だれも取りに来なければ、送達不能として裁判所に書類を返送する。

送達場所に名宛人がいるにもかかわらず受け取らなければ、後述の差置送達が許されるかが問題となる。

補充送達106条
送達場所で送達名宛人に出会わない場合には、送達名宛人の使用人その他の従業者又は同居者であって相当の分別のある者に書類を交付することにより、送達の効力が生ずる。これを補充送達という。送達名宛人に代わって書類を受領できる者を補充送達受領資格者という。 送達場所が送達名宛人の就業場所である場合には、彼が就業している場所を管理している他人・その法定代理人、若しくはその使用人又はその他の従業者が受領資格者となる(106条2項)。就業場所で補充送達がなされた場合には、送達名宛人が書類を受領することを確実にするために、裁判所書記官はその旨を名宛人に通知する(規則43条)。普通郵便で通知するのが通常である。就業場所での補充送達受領資格者は、書類の交付を拒むことができる。

送達書類を受領した者と送達名宛人との間に利害関係の対立があって、送達書類が実際には送達名宛人に渡らなかった場合に、補充送達の効力がどうなるかについては、場合分けが必要である。

)送達書類を受領した者がその訴訟において受送達者の相手方当事者又はこれと同視し得る者に当たる場合は、その送達は無効である。最高裁判所 平成19年3月20日は、このことを必ずしも明示しているわけではないが、民法108条を参照条文としてあげていることも含めて考えれば、その趣旨と見てよいであろう。

)事実上の利害関係があるにすぎない場合(例えば、被告の同居人が無断で被告を連帯保証人にしていて、保証債務の履行請求の訴えが提起されたが、同居人が訴状のみならず、第一審の被告敗訴判決も被告に渡らないように隠してしまったときに問題となる)については、次の2つの解決方法がある[6]。
  1. 送達無効説  補充送達の効力を否定する見解。大阪高等裁判所 平成4年2月27日 第11民事部 判決(平成2年(ネ)第936号)・判タ793号268頁
  2. 送達有効説  補充送達の効力を肯定しつつ、控訴提起の追完あるいは再審の訴えを許容する。東京高等裁判所 平成6年5月30日 民事17部 判決・判例時報1504号93頁(平成5年(ネ)第3904号)(控訴提起の追完が認められた事例)、最高裁判所 平成19年3月20日(訴状等の送達が補充送達として有効であるからといって,直ちに民訴法338条1項3号の再審事由の存在が否定されることにはならず,事由の存否は,当事者に保障されるべき手続関与の機会が与えられていたか否かの観点から改めて判断されなければならず、訴状等を受領した者から受送達者に対して訴訟関係書類が実際に交付されず,そのため,受送達者が訴訟が提起されていることを知らないまま判決がされたときには,当事者の代理人として訴訟行為をした者が代理権を欠いた場合と別異に扱う理由はないから,民訴法338条1項3号の再審事由がある、とされた事例)。


法的安定性を少しでも高めておくために、送達有効説を支持すべきであろう。

差置送達
送達名宛人または補充送達受領資格者(106条1項)が正当な理由なく書類の受取りを拒む場合には、送達すべき場所に書類を差し置くことにより、送達の効力が生ずる。送達の命令的性格が顕著に現れる場合の一つである。それだけに、送達名宛人の利益に対する慎重な配慮が必要である。法文上、送達名宛人または補充送達受領資格者が送達を受けることまたは書類の交付を受けることを拒むことが認められている場合には、差置送達はできない;次の場合がこれにあたる。

2.2 書留郵便等に付する送達(付郵便送達)

意義
補充送達も差置送達もできない場合には、次の場所に宛てて書類を書留郵便またはこれに相当する信書便に付して発送することができ、発送の時に送達があったものとみなされる(107条1項・3項。を作成するのは、発送業務を行う書記官である)。 郵便物を送達名宛人へ配達できないため、裁判所に返送された場合でも、送達の効果に影響はない[12]。
107条
1項
要件 書留郵便等の発送先 通常の場合に次になされる送達
1号 103条による送達の不成功 住所等 この場所への通常送達(104条3項3号。107条2項の適用なし)
2号 104条2項による送達の不成功 届け出られた送達場所 この場所への書留郵便等に付する送達(107条2項)
3号 104条3項による送達の不成功 住所等(就業場所への送達はなされない) この場所への書留郵便等に付する送達(107条2項)


この送達方法は、送達名宛人(及び家族等)が不在を装うなどして送達を免れようとする場合に、有効な手段である。しかし、書留郵便等が受領されないため、郵便事業株式会社の営業所での留置期間経過後に裁判所に戻され、送達名宛人がこの方法による送達がなされたことを現実に知らない場合でも、送達自体は有効となる。そのような事態の防止のために、この送達方法がなされた旨が送達名宛人に通知される(規則44条)。通常、普通郵便でなす([条解*1997a]95頁参照)。

この送達方法をするか否かは、裁判所書記官の裁量に委ねられており、交付送達や補充送達・差置送達ができない場合に、直ちにこの送達方法をとらなければならないというものではない。裁判所書記官は、この送達方法を選択する前に、原告に、被告がその住所に居住しているか、現在の就業場所はどこかを調査し、回答することを求める。原告が十分に調査しなかったために書留郵便等に付する送達が行われ、その結果、被告が訴訟の開始を知らないまま敗訴判決を受けたとしても、裁判所書記官が回答の不備を認識していた場合あるいはそれを認識しなかったことに過失がある場合を除けば、書記官が書留郵便等に付する送達を選択したことを違法とすることはできず、被告からの国家賠償請求は認められない[7]。

この場合の救済方法として次のものがある。
送達方法の固定
104条2項・3項により定まる送達場所に交付送達・補充送達・差置送達を試みたが送達できなかったため107条1項2号・3号により書留郵便等に付する送達がなされると、次回の送達にあたって、交付送達を試みても同様な結果に陥る可能性が高いので、交付送達を試みることなく書留郵便等に付して発送することができる(107条2項)。

設 例
送達に関する規定は、104条と107条との間で相互的参照がなされているため、わかりにくい。例を挙げて、確認しておこう。

2.3 外国における送達

送達受取人が外国にいる場合の送達は、108条による。

2.4 送達報告書(109条

送達をした者(郵便業務従事者、執行官または裁判所書記官)は、送達報告書(送達に関する事項を記載した書面)を作成し、これを裁判所(送達事務取扱者である裁判所書記官)に提出する。送達報告書は、裁判所書記官が保管する。送達報告書は公務員(執行官・裁判所書記官)又はみなし公務員(送達を実施する郵便業務従事者)が作成する文書として保護される(228条2項、刑法155条−158条参照)。 なお、送達報告書の作成は公証行為として重要であるので、郵便法において郵便認証司という職位が設けられ(58条)、この職位にある者が行う(送達報告書の作成は、郵便法上は、「特別送達の取扱いに係る認証」として規律されている。同法58条2号参照)。また、郵便法74条により、郵便認証司及び特別送達の業務に従事する者は、刑法その他の罰則の適用については、「法令により公務に従事する職員」(刑法7条1項参照)とみなされている。

郵便業務従事者は、送達受領者から受領した旨の押印あるいは署名を受ける。他人が送達受領者の名をかたって書類を受領して、虚偽の押印又は署名をすれば、有印私文書偽造罪を構成する(最高裁判所 平成16年11月30日 第2小法廷 判決(平成16年(あ)第761号)) 。

2.4 公示送達

意義
他の送達方法をとることができない場合、あるいはそれを試みても成功しない場合には、最後の送達方法として、公示送達がとられる。これは、裁判所書記官が送達すべき書類を保管し、いつでも送達を受けるべき者に交付すべき旨を裁判所の掲示場に掲示するという方法により行われる送達方法である(111条)。なお、呼出状は簡単な書類であるので、呼出状自体を掲示する(規則46条1項)。

要件
公示送達は、次のいずれかに該当する場合に、当事者からの申立てに基づき、裁判所書記官がする(110条1項・2項)。
  1. 当事者の住所、居所その他送達をすべき場所が知れない場合(1号)
  2. 書留郵便等に付する送達ができない場合(2号)
  3. 外国において送達すべき場合に、108条の嘱託による送達ができない場合、又は、できないと認められる場合(3号)
  4. 外国において送達すべき場合に、108条の規定により外国の管轄官庁に嘱託を発した後6月を経過してもその送達を証する書面の送付がない場合(4号)


1号から3号により公示送達が一度なされると、その後は当事者からの申立てがなくても公示送達がなされる(110条3項)。4号により公示送達がなされた場合には、その後に送達を証する書面が送付されてくることもありうるので、申立てに基づき公示送達をするとの原則が維持される(同条2項に注意)。

裁判所は、訴訟の遅滞を避けるため必要があると認めるときは、申立てがないときであっても、裁判所書記官に公示送達をすべきことを命ずることができる。ただし、訴状の公示送達については、常に原告の申立てが必要である。公示送達の申立てがないため訴状の送達ができなければ、訴状が却下されるだけであり(138条2項・137条2項)、訴訟の遅延は問題にならないからである。

効力発生時期(112条
最初にする公示送達は、111条の規定による掲示を始めた日から2週間の掲示期間を経過することによってその効力を生ずる(初日不算入)。ただし、110条3項により職権でなされる2回目以降の公示送達は、掲示を始めた日の翌日に効力を生ずる(112条1項)。外国においてすべき送達の場合には、掲示期間は6週間に延長されている(同条2項)。

付郵便送達との比較
公示送達と付郵便送達のどちらが被告にとって有利かは一概に言えない。
公示送達による意思表示の到達(113条
公示送達される書類に請求または防御の方法に関する私法上の意思表示(賃貸不動産の明渡請求訴訟における契約解除の意思表示など)が含まれている場合には、その意思表示も公示送達により到達されたとみなすことが必要である。そこで、公示送達がなされる場合のうち、相手方の所在を知ることができない場合(110条1項1号)に限り、公示送達の掲示を始めた日から2週間を経過した時に、相手方に到達したものとみなされる(民法98条1項のうち、「相手方を知ることができず」のときは、除かれる。訴訟では、このような事態は、証拠保全の場合を除き、考慮する必要がないからである)。2回目以降の送達が掲示の日の翌日に効力を生ずる場合でも、私法上の意思表示の発生時期は、2週間経過後である(民法98条3項本文と同じである)。表意者が相手方の所在を知らなかったことについて過失がある場合には、意思表示の到達の効力は生じない(民法98条3項ただし書の準用)。

目次文献略語
1999年6月20日 −2013年8月2日